ダイハツ工業のミラトコット=2018年6月25日午後0時58分、東京都港区、伊藤弘毅撮影
軽自動車の開発競争で安全性に焦点をあてる流れが強まっている。価格の安さを維持しつつも、自動ブレーキや衝突回避システムなどを備えた高機能モデルが販売の中心に位置づけられており、かつての燃費中心の競争が変化している。
ダイハツ工業は25日、新型車「ミラトコット」を発表。若い女性を意識した車種で、軽業界で初めて座席横のサイドエアバッグや窓を覆うエアバッグを全モデルで標準装備に。歩行者も認識できる自動ブレーキなどを備えた、衝突回避システムも多くのモデルで導入した。バック走行時に、車を空から見たような視点で位置確認できるモニター装置などもつけられる。
奥平総一郎社長は同日の記者会見で「運転に不安がある方も安心して乗れるよう、徹底的にこだわった」と話した。運転のしやすさにも工夫し、低速走行時のハンドル操作は昨年発売の「ミライース」と比べて30%軽いという。
車体のデザインにもこだわり、20~30代の女性社員7人でつくる開発チームが「ユーザーが求めるかわいらしさの基準が、よりシンプルな方向に変化している」と分析。ボディーの曲線を減らした箱形にした。
希望小売価格は消費税込み107万4600円~142万5600円で、衝突回避システムを備えるモデルは113万9400円から。ダイハツ九州(大分県中津市)で生産し、月3千台の販売をめざす。
女性を意識した低価格車種ではこれまで、主にスズキの「アルトラパン」とダイハツの「ミラココア」(今年2月に生産終了)が競っていた。安全面で先行したのはスズキで、2015年にレーザーレーダー式の衝突回避システムを標準装備していた。
軽自動車市場はユーザーが多様化し、かつての燃費を重視した競争が、ここ数年は「付加価値をいかにつけられるか」(スズキ広報)に移っている。ホンダの「N―BOX」など車内の広さを売りにするタイプなども含め、安全性能を競う流れが強まっている。調査会社TIWの高田悟シニアアナリストは「衝突回避などの安全性能は、軽でも必須の機能になりつつある」と話す。(伊藤弘毅)