開票センターで両手を掲げ、笑顔を見せる文在寅氏=9日午後8時40分、ソウル、遠藤啓生撮影
韓国大統領選は9日、投票された。韓国メディアが実施した投票所での出口調査の結果、進歩(革新)系の最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)・前代表(64)が大きくリードした。文氏は「圧倒的な勝利」と述べ、事実上の勝利宣言をした。李明博(イミョンバク)政権、朴槿恵(パククネ)政権と9年にわたって続いた保守政権が、進歩系の政権に交代する。
文氏の政治スタイルは? 「清廉で温厚だが怒ることも」
特集:韓国大統領選挙
文氏は慰安婦問題の合意について日本政府に再交渉を求めている。安倍政権は応じない構えを示しており、日韓関係が悪化するおそれがある。北朝鮮についても対話を重視するなど外交政策が大きく変わる可能性がある。
出口調査はKBSなどテレビ局3社共同で行われた。その結果によると、文氏が41・4%、朴政権で与党だった「自由韓国党」の洪準杓(ホンジュンピョ)・前慶尚南道(キョンサンナムド)知事(62)が23・3%、中道系の野党第2党「国民の党」の安哲秀(アンチョルス)・元常任共同代表(55)が21・8%だった。
文氏は9日夜、国会議員会館内に設けられた「共に民主党」の開票センターを訪れた。出口調査の結果を受け、党幹部らに対し、「我々がこのまま勝利したら切実さの勝利だと思う」とし、「政権交代を念願した国民の切実さだ」と述べた。
文氏は弁護士出身。故盧武鉉(ノムヒョン)大統領の側近で、盧政権では大統領秘書室長も務めた。2012年の前回選挙で朴前大統領に敗れたものの、知名度が高かった。14年に起きた旅客船セウォル号事故への対応や慰安婦問題の日韓合意などをめぐり、朴政権を追及した。
朴前大統領の支援者チェ・スンシル被告による国政介入疑惑が明るみに出てからは、大統領辞任を求める大規模集会にも参加した。選挙では「政権交代できなければ水の泡になる」と強調し、朴政権に対する厳しい批判の受け皿になったとみられる。
選挙戦に入ってからは世論調査で支持率トップを譲らない安定した戦いぶりで保守層にも支持を広げた。
争点となった米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD(サード))の韓国配備をめぐっては、「次の政府に任せるべきだ」として賛否を明言しなかった。北朝鮮に対しては、対話を重視する姿勢も示した。テレビ討論会などでは、北朝鮮の核・ミサイルに備えるために配備が必要だと主張する他の候補から追及されたが、決定的なダメージにはならなかった。
米国はTHAADの装備をすでに搬入し、事実上運用を始めている。配備撤回は極めて困難で、THAADをめぐる対応が今後の米韓関係の試金石になる。
投票は午前6時から午後8時まで行われた。暫定投票率は77・2%。2012年の前回は75・8%だった。今回は任期満了に伴う大統領選ではないため、中央選挙管理委員会が10日に開票結果を確定し、当選者を決定した時点から大統領に正式に就任する。任期は5年。(ソウル=東岡徹)