中島岳志・東京工業大教授
森友学園への国有地売却問題では当初、政治家の関与の有無が焦点になった。稲田朋美防衛相の夫の弁護士は昨年1月、汚染土除去費の支払いをめぐる国と学園の協議に同席。鴻池祥肇(よしただ)元防災担当相の事務所も昨年3月ごろまで交渉を仲介していたことが判明している。籠池氏も3月23日の国会の証人喚問で、複数の政治家らの名前を挙げて協力を頼んだと明らかにした。
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ただ国有地売却や小学校の認可に、政治家の直接的な介入は確認されていない。野党側はいま、安倍晋三首相周辺に財務省側が「忖度(そんたく)」し、大幅な値引きで国有地を売ったのではないか、と追及している。
理由は安倍首相の妻、昭恵氏と学園のつながりだ。籠池氏によると、昭恵氏には12年10月ごろ、国有地での小学校の新設構想を相談。昭恵氏は、園児に教育勅語を素読させていた学園の幼稚園で15年9月に講演し、新たな小学校の名誉校長を引き受けた。籠池氏は土地取得まで約3年半、昭恵氏に国との交渉経緯を繰り返し報告し、建設予定地で昭恵氏と撮影した写真を国の担当者に示した、と説明している。
「忖度」の疑念を強めたのは15年11月に昭恵氏付の政府職員から籠池氏に送られたファクスだ。そこには定期借地期間を延長できるかなど、籠池氏の要請で職員が財務省に照会した結果が記されていた。
この時、財務省側で対応したのが田村嘉啓・国有財産審理室長だ。田村氏は昨年3月、籠池氏と面会。籠池氏の録音記録によると籠池氏は昭恵氏の名前に触れながら、新たにごみが見つかったとして「早急な対応」を迫り、田村氏は土地の賃貸が「特例」だと語っていた。
安倍首相はファクスの内容から「ゼロ回答なので忖度していないことは明らか」と反論している。