誤射で死んだコウノトリの雌(雲南市大東町、同市教委提供)
島根県雲南市大東町で巣を作り、4月下旬にヒナが確認されていた国の特別天然記念物コウノトリのペアの雌が19日、猟友会員の誤射で死んだ。ヒナは1971年に野生で姿を消して以来、兵庫県豊岡市一帯以外の野外では国内2例目として生まれた。片親だけで無事に巣立つことができるのか、地元住民は気をもんでいる。
19日夜に会見した雲南市教育委員会によると、雌は豊岡市生まれの5歳。同日午前10時ごろ、電柱にある巣から2~3キロほど離れた大東町の田んぼに1羽でいるところを、雲南市猟友会所属の60代男性に散弾銃で撃たれた。サギと誤認したと話しているという。市は田んぼの苗を踏んだり抜いたりするとして、一帯で10月までをサギの駆除期間と決め、猟友会に依頼していたという。
死んだ雌は福井県で放鳥された雄(2歳)とペアを作り、4月26日にヒナが確認された。その後の調査で4羽いることが分かり、順調なら7月上旬にも巣立つと見込まれていた。
一方、市教委によると、最近は巣の周囲に別のコウノトリが数羽現れ、ペアが威嚇する様子も確認されていた。兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園(豊岡市)によると、ヒナが小さいうちはカラスや猛禽(もうきん)類に加え、野生の習性で親以外のコウノトリに狙われることが多い。片親になると餌探しなどで巣がヒナだけになる時間が増えるため、郷公園がヒナを引き取って育てた例もあるという。
雲南市教委によると、20日は雄がヒナに餌を8回、水を1回与えていた。片親のまま見守るかヒナを保護して郷公園に引き取ってもらうかを数日中に判断するという。
山岸哲(さとし)園長は、「ヒナへの足環(あしわ)装着の準備を整えていた。残されたヒナが無事成長することを願ってやみません」とのコメントを出した。
雲南署は誤射した男性から事情を聴き、誤射の原因を調べている。