

ITは若い世代のもの。そんな壁を、81歳でつくったゲームアプリ「hinadan(ひな壇)」で打ち破った。
ひな祭りが題材。画面上の絵を押す仕組みで操作しやすくしたり、説明文でカタカナを避けたり。1年余りで9万のダウンロード。世界を驚かせた。
米アップルの世界開発者会議に招かれ、経営トップのティム・クック氏に言葉をかけられた。「あなたに刺激を受けている」と。
若いころにも壁があった。高卒で大手銀行に入った。当時「女性の定番」だった、お茶くみやコピー取りからスタートし、関連会社の副部長まで勤めあげた。
退職を機にパソコンを始めた。ネット接続に3カ月。いまや神奈川県藤沢市の自宅で教える側だ。
「ITを使いこなすリケロウ(理系老人)を増やそう」と呼びかける。ニューヨークの国連本部では「シニアの社会参加にこそITが必要だ」と講演した。ひとり暮らしの老人の孤独を癒やし、家族らの安否確認などにも役立つからだ。司会者から「年齢は壁でなく、よい製品をつくるカギになりうると示した」との評価を得た。
アプリは英語、中国語に続き、友人の手で韓国語やスペイン語の訳がつく予定。秋には中国でのイベントにも赴く。「人生は60歳過ぎからが面白い。高齢化先進国の日本から、年を取るのも悪くないと伝えたい」(藤崎麻里)