コスプレイヤーがお気に入りの痛車の前で「はい、ポーズ」=栃木県足利市の渡良瀬川河川敷
町おこしが目的で始まった「足利ひめたま祭」が全国有数の「痛車(いたしゃ)祭」の場になりつつある。2010年に市内有志で地元アニメキャラを作って町おこしを狙った企画だが、年々全国から派手な痛車が参集し、アニメのコスプレイヤーとともに混然一体となった世界をつくっている。
21日に栃木県足利市の渡良瀬川の中橋緑地多目的広場であった「足利ひめたま祭」では、炎天のもと、両岸にびっしり約600台の痛車が並んだ。自分の車に好きなアニメやゲームのキャラクターをシールで装飾して走ると、「痛々しい目を向けられる」などで「痛車」。
ポルシェ、スカイラインGT―Rの高級車も並ぶ。大阪、秋田、奈良、横浜など全国から集まる。アニメつながりで思い思いのキャラに扮したコスプレイヤーも各地から集まり、河川敷はサブカルチャー一色に染まる。
10年に市内の商工会議所青年部や市内企業の有志らが、市内にある縁結びの神「足利織姫神社」と悪縁切りの「門田稲荷神社」の祭神をモチーフに「もえキャラ」をつくって町おこしをしようとしたのが始まり。美少女キャラ「ひめちゃん」「たまちゃん」はアニメファンの間で人気を呼び、祭りの一環としてアニメ好きに受ける痛車祭りが始まった。
当初は50台の小規模な痛車祭だったが、年々参加台数が増え国内最大級に成長し、現在、展示参加チケットは発表と同時に即完売という。商工会議所の青年部会長として企画を立ち上げた「ひめたま製作委員会」会長で薬品卸会社経営の富田勘也さん(52)は「キャラを残そうと始めた企画がサブカルチャー愛好者に広がった。最終的に町おこしにつながればいい」。
独車アウディをアニメの金髪美少女でラッピングしている滋賀県の農家の男性(37)は「全国の人と会えるし参加しやすい。車の趣味の延長」。宇都宮市の自動車会社員の男性(30)は「いい年したおっさんがと思われるが、痛車は子ども心を忘れない、好きに作れる1分の1のプラモデル」と魅力を語る。(北崎礼子)