琵琶湖の水生生物で食物連鎖の上位にいるナマズから、厚生労働省が定める暫定規制値を超える水銀が測定されたことが、福岡工業大や滋賀県立大などの研究でわかった。周辺の環境に存在する微量の水銀が食物連鎖で濃縮されていることが裏付けられた。
千葉市で今月開かれた地球惑星科学連合大会で発表した。水銀のリスクはよく知られ、厚労省は魚介類中の暫定規制値を1キロあたり0・4ミリグラムとしている。規制値は湖の淡水魚も対象だ。チームは2011~16年に琵琶湖を調査。湖水や周辺の大気中の水銀濃度はほかの地域と同レベルだった。中国から大気中を運ばれてきた水銀も含まれる可能性があるという。
一方、魚の身ではアユで平均0・03ミリグラム、ホンモロコ同0・05ミリグラムなどと低かったが、小魚も餌にするニホンナマズやイワトコナマズは同0・42ミリグラムで規制値を超えた。体長1メートルを超えることもある琵琶湖の固有種ビワコオオナマズは同0・86ミリグラムとアユの30倍近く、規制値の2倍超の濃度だった。
ビワコオオナマズは味がよくなくあまり食べられていないが、イワトコナマズなどはおいしいとされる。チームの永淵修・福岡工大客員教授は「生物濃縮によって肉食魚に高濃度の水銀が蓄積していることが改めてわかった。食べる機会は海水魚ほどないかもしれないが注意が必要だ」と話している。(竹野内崇宏)