郵便切手の変遷
1950年代から何度かブームが訪れた切手収集。社会現象となった往時の勢いはないが、今も根強い人気がある。かつてとは違う新たな楽しみ方を見いだす人も登場しているようだ。人々を引きつける切手の魅力とは何なのか。
4月下旬、都内であった切手イベント「スタンプショウ2017」には3日間で約7500人が訪れた。全国の切手商が自慢の品を並べた即売ブースでは掘り出し物を探す男性収集家が目立ったが、世界各国の「かわいい切手」を1枚30円で買えるコーナーは女性に大人気だった。切手はり絵作りなどの体験コーナーでは親子連れの姿もあった。年代・性別に偏りなく様々な人が来場していた。
主催したのは日本郵趣協会。46年に設立され、収集家同士の情報交換や交流を進めてきた。落合宙一専務理事(58)は「切手収集に『こうあるべきだ』という縛りはありません。いろんな楽しみ方を提供することで末永く親しんでもらえたらありがたい」と話す。会員数は約8千人。世界の切手愛好家団体でも有数の規模だが、ピークの4万人超からは大きく減った。メール全盛で、切手を貼らない郵便物も多いなかで、子どもたちに関心を持ってもらう取り組みにも力を入れる。2012年からは、小学生が切手の図案や題材について調べた内容などを発表する「ゆうびんde自由研究・作品コンテスト」を開催している。「1枚の切手から、発行当時の時代背景や文化など多くのことを学べる。その魅力をより広く知ってもらいたいですね」
収集には、国別や図案のテーマ別、印刷の微妙な差異や消印の種類を楽しむなど実に多様な形態がある。絵入りの封筒に新切手を貼り、発行初日の特別な消印を押した「初日カバー」を集める人も。熱心な愛好家は、収集品を「文化大革命下の中国切手」や「切手にみる各国の教育制度」など特定のテーマでまとめて解説をつけ、多くの人が目にする切手展に出品。保存状態や希少性、テーマに対する正確な知識、展示全体のストーリー展開などを基準に審査して優劣を競うものもある。切手展を通じて、収集という個人的な営みが、他者を意識した自己表現になっている面もある。
■五輪や万博の頃にもブームに
1894年、明治天皇の銀婚式…