15回を戦い終えた福井工大福井(左)と健大高崎の選手たち=26日午後6時24分、阪神甲子園球場、細川卓撮影
■選抜高校野球
大会史上初の2試合連続引き分け再試合 選抜高校野球
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互いに譲らない熱い戦いに観客の拍手が球場を包んだ。26日、第2試合の福岡大大濠―滋賀学園と、第3試合の健大高崎(群馬)―福井工大福井はともに延長15回引き分け再試合となった。
福岡大大濠と滋賀学園との2回戦は2時間49分の熱戦となった。
十五回裏2死三塁、滋賀学園の6番山本峻平君(2年)は7度目の打席に入った。「欲が出てしまった」と3球目をバットの根元に当ててしまう。打球はふらふらと投手の頭上にあがり引き分けに。
八回途中から救援した滋賀学園の棚原孝太君(3年)は、22日の東海大市原望洋(千葉)戦でも延長14回192球を投げた。この日、試合が進むにつれて「前の延長14回が頭に浮かび、正直『またか』と思った」。
甲子園入りしたころに右手中指のまめがつぶれた。傷が広がらないよう瞬間接着剤で皮をくっつけていたが、延長戦に入ったころには傷口がむき出しになった。試合後、「甲子園で少しでも長く野球ができるのは得」と気丈に語った。
196球を投げ抜いた福岡大大濠のエース三浦銀二君(3年)の頭には、同点に追いついた八回、「延長かも」という思いがよぎった。それでも、延長に入ると「スイッチを入れ直せた」と振り返る。ストレッチをしてたくさん睡眠をとり、次に備えたいという。
一塁側アルプス席で福岡大大濠へ声援を送っていた福岡市中央区の釼持(けんもち)恵さん(43)は「点が入るか入らないかのせめぎ合いでひやひやした」。三塁側アルプス席で滋賀学園を応援していた滋賀県野洲市の三輪あき子さん(42)は両校に大きな拍手を送った。「福岡大大濠は投手が1人でよく投げた。滋賀学園は初戦も延長戦で粘り強く戦った。どちらの良さも出ていた」
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午後2時40分に始まった福井工大福井と健大高崎の第3試合。選手たちは試合前、「自分たちも」とは思っていなかった。
福井工大福井が1点をリードして迎えた九回裏。2死二、三塁から健大高崎は重盗で1点を奪い同点に追いつく。三塁走者の小野寺大輝君(3年)は「これで行ける」と思った。
だが、後続が倒れ延長戦に。その後は両チームとも得点圏に走者を進めるものの、決定打が出ないまま回だけが進んでいく。
健大高崎の先発で、六回途中から外野に回り、十回から再びマウンドに登った伊藤敦紀君(3年)は「延長では投げていて体が重くなるのを感じたが、後ろを守る仲間を信じて投げた」。
十五回表、福井工大福井は2死から2番佐藤勇斗君(3年)が右中間に三塁打を放つ。返球がそれ、三塁コーチが手を回す。それを見た佐藤君は本塁を狙うが、カバーに入った外野手が捕手に好返球。佐藤君は三本間に挟まれアウト。「自分も外野手、カバーに入ることを頭に入れておけばよかった」と悔やんだ。
十二回から登板した福井工大福井の氏家拓海君(3年)は、雨でぬかるんだマウンドを気にしながら投げた。「緊張したけど思い切りやるしかなかった」。三塁側アルプス席から見守った母ユウ子さん(49)は「無失点に抑えられてよかった。次は仕事を休んででも見に来ます」と喜んだ。
試合は午後6時24分に終了。カクテル光線がどろどろのユニホームで整列する選手を照らしていた。
試合後、福井工大福井の北川智也主将(3年)は「疲れたけど楽しかった。再試合への意識はなく、試合に勝つことだけを考えていた。もう1試合できることは楽しみ」と話した。健大高崎の湯浅大主将(3年)は「まさか自分たちまで再試合になるとは思わなかった。お互いの特徴がわかっているから、再試合では相手投手の癖などを改めて確認し、しっかり休んで準備をしたい」と話した。