トランプ政権の誕生後、米ホワイトハウスの公式ウェブサイトからスペイン語のページが消えた。米国で暮らすヒスパニック系住民の人口は約5600万人で全人口の17%超を占める。「少数派の軽視だ」と批判の声も上がるが、ホワイトハウス側は削除は一時的なものと強調。しかし、政権発足から4カ月が過ぎてもページは復活していない。
報道によると、ホワイトハウスのウェブサイトにスペイン語表記のページが設けられたのはオバマ政権時代。英語ページの翻訳のほか、メキシコなど中南米出身者や、その子孫であるヒスパニック系住民に関連するニュースが掲載されていた。ただ、1月にトランプ大統領が就任すると、何の前触れもないまま閲覧できなくなった。
トランプ氏は大統領選中、メキシコからの不法移民を「強姦(ごうかん)犯」などと決めつけ、同国との国境に壁を築くと主張。大統領選中は「米国の言葉はスペイン語ではなく英語だ」と語り、共和党候補でメキシコ人の妻を持つジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事を「英語で話す手本を示してほしい」などと批判する場面もあった。
これに対し、スペイン語ページが閉鎖されると、「ページを消してもヒスパニックの存在は消せない」「ヒスパニック社会に対する侮辱だ」との批判が国内外から上がった。ホワイトハウスのスパイサー報道官は「少し時間がかかる。ページ復活に向けて努力している」と語り、削除は一時的なものとの見解を示している。
米国ではカリフォルニア州やテキサス州などで特にヒスパニック系人口が多く、公立学校の70%以上を占める地域もある。世界でスペイン語の普及をはかるセルバンテス文化センター(マドリード)によると、米国でスペイン語を話す人の数はメキシコに次いで世界第2位。スペインを上回っており、2060年には米国人口の28%超に達すると指摘している。(ワシントン=田村剛)