くらもちふさこさんと対談する秋本治さん=31日午後5時2分、東京都中央区、金川雄策撮影
第21回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催、兵庫県宝塚市、東京都杉並区、豊島区、練馬区など後援)の贈呈式が5月31日、東京都内であり、受賞者らが喜びを語った。記念のトークイベントも開かれ、関係者や抽選で選ばれた招待者ら約400人を沸かせた。
【詳報】くらもちふさこさん・秋本治さん記念対談
特集:手塚治虫文化賞
「花に染(そ)む」でマンガ大賞を獲得したくらもちふさこさんは、受賞決定後に駅の階段から滑って足を捻挫したと明かし、「人生において受け止めきれないくらいの賞の喜びと、捻挫の痛みでプラスマイナスゼロとなり、今は気持ちよく賞を受け取れます」。
「昭和元禄落語心中」で新生賞に選ばれた雲田はるこさんは、自作をテーマにした落語会が開催されたことに触れ、「寄席のお客さんが増えてほしいと思って描きました。日本の最高の文化であるマンガと落語の発展の、一助になれたことを光栄に感じています」とあいさつした。
短編賞「夜廻(まわ)り猫」の作者深谷かほるさんは「描いたのは、世の中で普通に頑張っている人。頑張ってる人たちがお互いに元気や勇気や希望を与え合えたらいいな、という気持ちを込めました」。
「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の40年にわたる連載完結で特別賞に選ばれた秋本治さんは「子供の頃からマンガ漬けで、自分もマンガ家になろうと夢を抱いたのは、手塚先生の本名が自分と同じ『治』だと知ってから。それからずっと、マンガを描いてきました」と語った。
贈呈式後の記念イベントでは、旧知の仲というくらもちさんと秋本さんが対談した。
秋本さんが「階段で転んだって? おちゃめな感じは昔から変わらないね」と言うと、くらもちさんは「自分らしいなと思う。秋本さんは『こち亀』の主人公の両さんとはまるで違う雰囲気で、初めてマンガ家同士の食事会で会った時は、バイクに黒い革ジャンで来ましたね」。
「花に染む」は主人公らが弓道に打ち込む。秋本さんも「こち亀」に、弓道の達人の早矢(はや)という美人警官を登場させた。
「ちょっとマイナーな弓道を二人で盛り上げようと話をした」と語った秋本さんは資料として弓を買ったが、「私は買ってない」とくらもちさん。「連載後半からようやく、弓道を始めたアシスタントさんが持ってきてくれましたけど」。「あんなに細かく描いてるのに?」と驚いた秋本さんは「いかにも詳しそうに見せるのも作家の技量だね」。くらもちさんは「なにげなくやるのがいいんですよ」とほほ笑んだ。(小原篤)