トランプ米大統領が温暖化対策の国際ルール「パリ協定」からの離脱を表明したことを受けて、ホワイトハウスは2日、トランプ氏の決断を称賛する社説を掲げた米5紙の一覧を、論説の一部を引用しつつ発表した。有力メディアでは離脱を批判する論調が強まっており、対抗する意図があるとみられる。
ホワイトハウスが紹介したのは、ニューヨークの大衆紙ニューヨーク・ポスト、経済紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、保守系のワシントン・タイムズなど5紙。
ニューヨーク・ポストは「エリートを満足させるために、庶民の声に反して経済を荒廃させてはならない」、WSJは「米国がリーダーシップを放棄しているというのは大げさだ」「経済成長こそ温暖化への最良の備え」、ワシントン・タイムズは「公約が守られる」などとそれぞれ離脱を評価している。
これに対し、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどは、一斉に離脱を非難する社説を掲げた。ニューヨーク・タイムズは「パリ協定からの不名誉な退場」と題して、「同盟国を動揺させ、ビジネス界に背き、競争力や雇用を脅かし、米国のリーダーシップを無駄にする」などと主張。ワシントン・ポストは「過去70年間、共和党と民主党の大統領のもとで平和と繁栄を推進してきた米国のリーダーシップに打撃を与えた」などと論じた。
一方、ペンシルベニア州ピッツバーグ市のペドゥート市長は2日、市政府の使用電力を2030年までにすべて再生可能エネルギーに切り替えることなどを盛り込んだ新たな温暖化対策を発表した。
トランプ氏は離脱を表明した演説で、製鉄や石炭で栄えたピッツバーグを引き合いに「私はピッツバーグで選ばれたのであって、パリではない」などと発言。パリ協定よりも地元の経済や雇用を守ると強調した。これに対し、ペドゥート氏は声明で「不謹慎な発表」と批判。「私たちは時代遅れの空想ではなく、住民とその未来の希望に基づいて経済を再建してきた」などと反論した。(ワシントン=小林哲)