富樫実さんの作品「空(くう)にかける階段’88-Ⅱ」(中央)。周囲を撤去作業のための鉄骨が囲む=京都市美術館
改修中の京都市美術館(同市左京区)で、前庭にそびえる巨大彫刻作品の扱いが宙に浮いている。地震による倒壊の恐れもあり、市はこの作品を10分割して撤去する方針だったが、彫刻家らが「芸術の破壊行為だ」と猛反発。市議会も再検討を求め、撤去工事は一時中止となった。アートか安全か、議論が続く。
同美術館の本館は1933年開館で、老朽化が進んだ。今年4月にいったん閉館し、2019年度中の再オープンに向けた再整備を進めている。
渦中の作品は、御影石の柱2本がうねるように並び立ったもので、高さ約11メートル。美術館が京都市在住の彫刻家富樫実さん(86)に制作を依頼、1988年、約2千万円で購入した。
改修にあたり、市は作品付近で見つかった汚染土を除くため、この作品の移動を検討。震度6弱の地震で倒壊する恐れも指摘されていた。大型モニュメントを移設した前例はないかと各地のケースを探したが見当たらず、安全に動かすには2本の柱をそれぞれ約2メートルずつ五つ、合わせて10のパーツに切断せざるをえないと判断したという。撤去後の保管場所や展示方法は未定。富樫さんの了承も得られたとして、当初は5月中にも撤去する予定だった。
ところが、市内のアーティストらは「分割したら、作品が作品でなくなる」とこの方針を強く批判。京都彫刻家協会(会員約120人)は5月の定期総会で作品の切断の中止と保存を求める決議を採択した。
「安全を優先せざるをえない」…