「あなたの声は私の喉を通った」(2009年)、(C)Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
生まれ育った沖縄にこだわり、作品が世界を巡り始めた沖縄在住の映像作家がいる。山城知佳子さん(41)。「生き延びたい」。自身の中の焦燥感やわき上がる衝動を、本土復帰45年を迎えた沖縄のいまと重ね合わせ、表現し続けている。
特集:沖縄はいま
暗い部屋に大型モニターが3台並ぶ。満開のユリ畑が映し出され、花と花の間から泥にまみれた無数の手が垂直に伸び、拍手するようにリズムを刻む――。
京都で14日まで開催された国際写真祭では、最新作《土の人》が展示された。23分の映像のラストシーンは、米軍基地建設が進む沖縄県名護市辺野古で、昨春に見た光景に触発された。
多数の機動隊の前で、数十人のおじいさんやおばあさんが道路に寝そべっていた。顔は怒りではなく、笑み。三線が響く。「本来、余生を楽しむ人たちが、やむにやまれず辺野古に行く。でも、この状況下で笑顔だった。基地に土地を奪われ、自由を奪われてきた人たちの生き延びるすべに衝撃を受けました」
作品には、辺野古といった説明も、セリフもほぼない。抽象的な映像は、世界のどこかで、土地に根ざして生きる人たちへの賛歌にも、死を暗示した世界にも見え、安易な解釈を拒む。
小さいころから絵を描くのが好きだった。高校、大学と芸術を学び、アーティストの道へ。生まれ育った場所でしかできない表現を探ってきた。
沖縄の亀甲墓で伝統のエイサー…