都議って、どんな人がいるの?
23日に都議選が告示されます。小池百合子知事が代表の「都民ファーストの会」と自民党都連との対立、築地市場の豊洲移転問題の行方――。何かと話題は尽きませんが、そもそも都議はどんな人で、どんな仕事をしているのでしょうか。1100万超の有権者が都議会の顔ぶれを決める前に、おさらいします。
特集:2017東京都議選
■報酬、今年度中は2割カット
1300万人超が暮らす首都・東京。都民の代表として小池都政をチェックしていくのが都議の大事な役割だが、何かと注目されるのは議員報酬の額だ。昨年度の年収は約1715万円にのぼり、議長には約2133万円が支払われた。
ただ、今年度中はこの報酬が2割削減されることになった。昨年、小池知事提出の条例案が成立し、知事給与が半額の年約1448万円になったためだ。「パフォーマンスに見える」と知事の姿勢を疑問視する一方、都議の報酬額が知事分を上回るのを避けようと、全会一致で身を切る決断をした。年収は都議が1372万円、議長は1706万円となった。
報酬のほかに、政務活動費(政活費)も交付される。報酬カットと同時に政活費は月60万円から月50万円になったが、一人あたり年600万円の政活費が各会派に支払われる。
政活費は調査・研究に使うのが本来の役割だが、適正な使い方かどうかたびたび議論が起こる。2015年度の政活費では、都議68人が業界団体などの新年会に計約1619万円を「会費」として支出していた。
都議からは「支持政党に関係なく、様々な人と話ができる貴重な機会」との声もあるが、上脇博之・神戸学院大法学部教授は「都民の視線はより厳しくなっている。議会が自ら襟を正さなければ行政をチェックできない」と指摘している。(向井宏樹)
■議案提出低調、知事追及で存在感
多額の報酬が支払われる都議たちは、どんな仕事をしているのか。
都議会の定数は127。主な仕事は、都政を日々ウォッチしながら、年4回の定例会で知事側が提出した予算案や条例案が適正かどうかを議論することだ。
昨年度、知事側が提出した議案のうち、議会側が江戸東京博物館(墨田区)館外施設の指定管理者に関する1議案に付帯決議を付けたものの、217議案すべてが原案通り可決された。知事側に働きかけ政策を実現したケースもあるとはいえ、知事提出の議案が通らないことはまれだ。
知事側だけでなく、11人の議員がそろえば議会側も議案を提出できるが、昨年度は22議案。調査研究のための政活費を受け取っていても、議案数からは知事側と政策を競い合っている様子はうかがえない。都議選の新顔の立候補予定者の一人は、民間での経験を踏まえて議員提案による条例化の少なさを嘆いた。「考えられない。こんな働きぶりでは会社にはいられない」
一方、現職都議の任期の4年間、知事は猪瀬直樹氏、舛添要一氏、小池百合子氏と次々変わった。そのトップの交代劇で都議会は「存在感」を示した。
「すべて自らの不徳の致すところ」。16年6月、舛添氏が都議会で辞職を表明した。政治資金の公私混同疑惑が浮上し都民の批判が集中。決断に追い込んだのは都議会だった。進退問題の先送りを望んでいた舛添氏だったが、野党だけでなく与党の公明、さらには頼みの自民も不信任決議案の提出に同調。全会一致での不信任案提出が決まり舛添氏は退場に追い込まれた。
築地市場(中央区)の豊洲(江東区)への移転をめぐっては、権限が強く、偽証に罰則も適用される調査特別委員会(百条委員会)を都議会が設置した。
知事在任中に移転を決めた石原慎太郎氏ら24人を証人喚問して移転の経緯を調査。土地売買の交渉役を担った浜渦武生・元副知事ら2人を偽証の疑いで告発することを決めた。
ただ、証言や百条委への提出資料で新事実が出た一方、都の土壌汚染対策費が860億円に膨らんだ経緯などは未解明。「百条委は都議選にらみのパフォーマンスだった」。都議会ではこんな批判の声も漏れた。
■海外視察、リオ五輪は高額で断念
都議の海外視察や公用車は税金の無駄遣いか――。都民からは時に厳しい目が注がれ、今回の都議選では見直しを公約に掲げる政党もある。
舛添要一前知事の高額な海外出張費で注目を集めた海外視察。都議はこの4年間で、2~7人の海外調査が6回あった。行き先は欧州、米国、豪州など。延べ27人で総費用は5050万円。1人あたりの平均は187万円だった。
昨夏には都議27人がリオデジャネイロ五輪・パラリンピックを視察予定だった。だが、宿泊費の高騰などで総経費が6200万円の予算を大幅に上回る1億円前後になる可能性があり、「世論の反発を招きかねない」と取りやめた。
都議には22台の公用車がある。内訳は議長、副議長のほか、議席数の多い自民、公明、民進系の各会派幹事長に1台。この3会派にはさらに7台の優先車がつく。
■変わり種の選挙ポスターも
都議選に立候補するにはどの程度の費用が必要なのか。選挙コンサルタント会社「ジャッグジャパン」(渋谷区)によると、供託金(60万円)や公費負担分を除いて1千万~2千万円。有権者数が多い選挙区ほど、名前や政策を記したビラの枚数が増え、費用がかさむ。
同社は「今回の都議選は注目されているが、候補者個人の知名度は低い。多くが名前を知ってもらうために苦戦している」と話す。 知名度を上げるために重要なツールの一つが選挙ポスターだ。公職選挙法で定められたポスターのサイズは長さ42センチ、幅30センチ以内。形の規制はなく、サイズ内なら丸でも三角でも構わない。作成費用は100万円前後を上限に公費負担の対象だ。とはいえ変形だとコストがかさむため、実際は四角形がほとんど。内容は虚偽さえなければキャッチコピーや公約、好きな言葉など自由に表現できる。
過去の国政選挙や地方選挙では、動物保護を訴え愛犬と一緒に写る候補者や、牛や兜(かぶと)などのかぶりもの姿、スマホや携帯で読み取れるQRコードと名前だけのもの、似顔絵やヌード風、アート調など、変化球で挑む候補者もいた。(円山史、西本ゆか、黒川和久)
■女性2割、最年少は29歳
都議は現在、126人(定数127、1人死去)。年代別では60代の47人(37%)が最も多い。次いで50代の33人(26%)。最年少は共産党の米倉春奈氏(豊島区)の29歳。最年長は今季限りで引退する自民党の重鎮、内田茂氏(千代田区)の78歳だった。
当選回数をみると、1回が最多で38人(30%)、3回が29人(23%)、2回が22人(17%)と続く。この1~3回で全体の7割を占めた。最も多く当選を重ねたのは、市場移転問題で5月に自民党を離れた立石晴康氏(中央区)の8回。
女性の数は25人で全体の2割。前々回は22人、前回が24人で、わずかに増えている。親や親族から地盤を引き継ぐ世襲議員は10人程度だった。
今回の都議選では9日現在、42選挙区から250人が立候補を予定している。新顔は半分を占め、女性は4人に1人となっている。
地元の区議や市議を経験した人が多く、国会議員秘書も目立つ。元スノーボード選手や歌手、猫カフェ経営者といった人もいる。