「蛍丸」を復元した興梠さん(左)と福留さん=竹田市役所
阿蘇神社(熊本県阿蘇市)の宮司・阿蘇家に代々伝わりながら、終戦直後の混乱で行方不明になった名刀「蛍丸(ほたるまる)」を、九州出身の若手刀工2人が太刀の「押し形」(拓本)や写真などをもとに復元し、阿蘇神社に17日、奉納した。熊本地震の被害が残る神社側は「復興の象徴になる」と喜んでいる。
蛍丸は鎌倉時代の刀工・来国俊(らいくにとし)が作った刃渡り3尺3寸(約1メートル)の大太刀。復元したのは岐阜県関市の刀匠で福岡市出身の福留房幸さん(32)と、弟弟子で竹田市荻町に日本刀鍛錬場を構える興梠(こうろき)房興さん(35)で、ともに関市の刀匠、25代藤原兼房さんのもとで修業した。2015年に興梠さんの鍛錬場の地鎮祭を阿蘇神社の神職に執り行ってもらったのをきっかけに復元を思い立った。
費用の捻出が課題だったが、人気オンラインゲーム「刀剣乱舞」にも登場する名刀が復元されることが話題を呼び、ネット上で資金調達するクラウドファンディングで3193人から計4512万円が集まった。
奉納を終えた福留さんは「一区切りだが、柄(つか)や鞘(さや)などの外装を整えるにはもう1年ほどかかる」。興梠さんは「仕事は続くので、兄弟子や他の職人とともに頑張りたい」と話していた。阿蘇神社は復旧に向け楼門の解体を終えたばかり。阿蘇治隆(はるたか)宮司は「復元とはいえ、刀が戻ったのは感慨深い」と語った。
神社には復元された蛍丸を一目見ようと大勢の刀剣ファンが集まった。熊本市の大学生、有川絵莉さん(22)は「感動した。外装が整ったらまたじっくり見に来たい」と喜んでいた。(菊地洋行)