UQコミュニケーションズの新店舗では訪れた客が価格などを尋ねていた=16日、神奈川県鎌倉市
ネット販売などでサービスを省き、料金の安さを売りにしてきた格安SIM業者が、街角でお店を増やしている。NTTドコモなど大手3社と同様の安心感をアピールして主婦や高齢者を取り込むねらいだが、コストがかさめば価格競争に影響しかねない。
「どれぐらい安くなるの?」。16日午前、UQコミュニケーションズが神奈川県鎌倉市のJR大船駅前に開いた店には、お年寄りや子連れの女性ら十数組が訪れ、店員に質問していた。1号店を昨年9月に出して以来、72店目。今年度中に120店まで広げる計画という。菱岡弘副社長は「大手から乗りかえたい人に安心感を持ってもらえるので、全都道府県に最低1店を出したい。コストはかかるが、収益は後からついてくる」と話す。
全国に約1千店を持ち、店舗網で先行したのがワイモバイルだ。ソフトバンク社内の第2ブランドのため、法人として独立していることが多い他社に比べ、資金面で有利だった。広報は「ブランドを発信できる面も含め、店舗が非常に重要な販売方法」と話す。
一般的に、1店あたりの維持費は東京都内で月数百万円とされる。ドコモやKDDI、ソフトバンクは自前ブランドの店をそれぞれ全国に約2500前後持つ。39店を展開する楽天の大尾嘉宏人モバイル事業長は「大手のような店数では低料金を維持できない。必要な場所に必要な規模の店を出す」と話す。
お店が持つ「広告塔」の役割を重視するのは関西電力系のケイ・オプティコムだ。お店は東京・秋葉原、大阪・梅田など5店にとどまるが、2月に出した渋谷の店はカフェを併設するなど若者向けのブランド発信基地と位置づける。イオンモバイルを手がけるイオンリテールも、4月に出した1号店は東京駅八重洲口の地下街。スーパーではアピールしにくい都心の会社員への知名度向上をめざす。
調査会社MM総研の横田英明研究部長は「ケイ・オプティコム、楽天、UQなど店舗を出す業者がシェアを伸ばしている。ネットや技術に詳しくない人にとって店舗の存在は大きい」と話す。(徳島慎也)