内田樹さん=細川卓撮影
9条護憲や脱原発などリベラルな主張で知られる思想家の内田樹(たつる)さん(66)が、雑誌のインタビューで、自分は「天皇主義者」になったと宣言した。右派的な用語で、アブない気配が漂う。なぜ今“変心”なのだろう。
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保守系雑誌「月刊日本」5月号のインタビュー記事「私が天皇主義者になったわけ」で表明した。過去には「立憲デモクラシーと天皇制は原理的に両立しない」と考えていた時期もあったが、天皇制を含めた今の政治システムをよく練られた政治的発明だと思うようになったことで「僕は天皇主義者に変わった」と語り、一部に驚きを与えた。
憲法で「日本国民統合の象徴」とされる天皇。内田さんは記事の中で、今の天皇制システムの存在は政権の暴走を抑止し、国民を統合する貴重な機能を果たしていると高く評価した。昨年8月の「お言葉」で「天皇の務め」とされた各地への「旅」にも着目。戦争犠牲者への「鎮魂」と災害被害者など傷ついた者への「慰藉(いしゃ)」は、実は国民を統合するために非常に効果的な政治的行為なのだとした。
「天皇主義者」は、右派色・復古色が強く、安易には使えない言葉だろう。取材すると、きっかけは昨夏のお言葉だと内田さんは明かした。
「陛下自らが天皇の務めは鎮魂と慰藉の旅だとの解釈を示されたのに、保守派の中からは『余計なことはするな』『静かに国事行為だけをしていればよい』と言わんばかりの声が出た。驚きました」
「皇室への素朴な崇敬の念すら…