旭硝子の島村琢哉社長
■旭硝子 島村琢哉社長に聞く
米国トランプ政権の経済運営を懸念しています。
主要100社景気アンケート2017年春特集
1990年前後、米国は不景気で苦しんでいました。それを打開するために米国は産業構造を変えていった経緯があります。鉄など基礎材の製造をやめて輸入に切り替え、国内の産業の比重を装置が少ないソフトウェアに移した。今の米国が貿易収支で赤字になっているのは、こうして輸入するようになった素材の影響が大きいと思います。
トランプ大統領は、「世界のために米国が犠牲になってきた。国内の製造量を増やせば雇用が生まれ消費が高まる」という考えなのでしょうが、製造業のインフラを作り直すのは時間がかかるしコストが合いません。本当にそれを進めるならば、(米国へ輸出する多くの国の産業が落ち込み)世界的な景気は停滞しますよ。
振り返って日本の経済を見ても、これだけ国債を発行しているのに物価が上がらず、景気が上向く実感はわきにくい。少子高齢化が進行中で、住宅と自動車という二つの大きな需要は、伸びが先々はあまり見込めない。多くの企業が海外に出て行ってしまっているのも、また事実なんですよ。
日本も、基礎となる産業は何か、きっちり考えていく時期なのかな。もし自分ができないんだったら、できる国の企業の開発拠点などを引き込むという手もあるのかもしれません。メーカーの立場としては製造業がまた隆盛を極めることを祈っているんですが。(聞き手・野口陽)