鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかった「大崎事件」をめぐって鹿児島地裁で2度目の再審開始決定がでた原口アヤ子さん(90)の弁護団が29日、最高検に対し、決定の取り消しを求める即時抗告をしないよう要請した。期限は7月3日で、検察が見送った場合は再審が始まる。
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弁護団はこの日提出した要請書で「(再審が決まった裁判では)検察にも十分な主張立証の機会が与えられた。検察は(再審が決まった)事実を重く受け止めなければならない」と指摘。原口さんは高齢で「権利救済には一刻の猶予も許されない」として、即時抗告をしないよう求めた。
要請書の提出後に都内で会見した原口さんの娘、京子さん(62)は「絶対にこんな冤罪(えんざい)事件をつくってはいけない。母はまだ元気だが、一日も早く無罪判決をもらって、ゆっくりさせてあげたい」と訴えた。
会見には映画監督の周防正行さんも出席。有罪の決め手になり、再審開始決定でその信用性が否定された知的障害を持つ親族の供述に触れ、「取り調べは障害を全く考慮せずに行われた。再審で検証することが、検察の威信を回復する手立てになるのではないか」と語った。
原口さんは02年に鹿児島地裁で1回目の再審開始決定を得たが、検察の即時抗告を受けた裁判を経て、決定が取り消された。弁護団長の森雅美弁護士はこの日の会見で、「15年前の(1回目の)再審開始決定で無罪を勝ち取れると思った。(検察は今回)正々堂々と(再審で)戦えばいいのではないか」と述べた。(志村英司)