保育士の子どもへの対応例
「20万円の壁」。長年勤めた保育士でも、月の手取りが20万円を超えるのは難しいという。子どもを保育所に預ける人が増え、専門性も求められているにもかかわらず、ほかの職種に比べても給与が安い傾向がある。保育士不足の一因にもなっている。
基本給は23万5300円。税金などが引かれた手取りは18万9142円。保育士歴24年の黒田貴子さん(44)は、給与明細書を見ながらつぶやいた。「20万円の壁があまりにも高い。これでは、保育士はなかなか来てくれない」
勤務する静岡市の認可保育所はこの2年間で、「目の前の園児にこれだけ手をかけているのに、自分の子に手をかけられない」といった理由から、子育て世代の保育士ら7人がやめた。責任の重さや忙しさに見合った給与がもらえない。現場にはそんな不満がたまっているという。
「手厚い保育」を売りにしている三重県鈴鹿市の認可保育所「ぐみの木ほいくえん」。一時預かりや休日保育などで、休園するのは正月三が日だけ。アレルギー対応の給食は手作りだ。1歳児4人に保育士1人を配置するのは、国の基準(6人に保育士1人)より手厚い。3人を預ける父親(32)は「子どものタイミングでおむつを替え、話も丁寧に聞いてくれる。保育士さんが多いからできると思う」と話す。
一方、保育士歴6年の女性の手取りは約12万円。「保育は大好きだけど、むなしくなる」。別の保育士は「水道代が怖くて、お風呂をためられない」「子ども服は人からもらう」と話す。
私立の認可保育所は国や自治体の補助金を受けて運営しており、保育士の給与は国の公定価格に左右される。ぐみの木を運営する社会福祉法人鈴生会の山中幹雄理事長(65)は「入るお金が決められており、職員数を増やせば、賃金を抑えざるを得ない。働く意欲や保育への愛情に頼った運営は、もう無理」と説明する。(高岡佐也子、諸星晃一)