公開練習で、ストーンを投じるSC軽井沢クの清水(右)と両角公
「日本選手権が、日本一を決める大会じゃなくなる」「協会に質問状を送ろうかと」。カーリング男子で日本勢初となる自力での五輪出場を決めたSC軽井沢クが、4日に長野県軽井沢町であった公開練習で複雑な心中を明かした。
選手を戸惑わせているのは、日本協会の6月17日の理事会での決定だ。協会は来年の日本選手権(1月28日~2月4日)を、平昌(ピョンチャン)五輪の直前に開催することを決めた。「直後の五輪に集中して欲しい」として、SC軽井沢クには出場させない。これまでの日本選手権は、五輪が終わった後に開催していた。
史上最長の日本選手権5連覇を続けているSC軽井沢クの選手たちは、その決定を報道で知って驚いたという。文書でチームに通知があったのは29日になってからだった。開催を前倒しした理由について、まだ直接の説明はないという。
マイナー競技であるカーリング界にとって、五輪は4年に1度脚光を浴びる貴重な機会だ。そして直後に開かれる日本選手権は、五輪出場チームの「凱旋(がいせん)大会」としても注目を集めてきた。女子のチーム青森が人気を集めた2010年バンクーバー五輪直後の大会では、会場に仮設の観客席が設けられたほどだった。
スキップの両角友佑は「最も日本選手権が盛り上がる年なのに」と言い、サードの清水徹郎も「多くの人にカーリングを知ってもらう、という部分に貢献できないのは残念」と話す。セカンドの山口剛史は「(将棋の)藤井聡太四段の29連勝とか、イチロー選手の3千安打とか、記録は次世代の子どもの目標となるもの。そこにチャレンジしたかった。5年かかった記録を超えるには、さらに6年かかる」と語った。
SC軽井沢クは世界選手権出場枠を争うパシフィック・アジア選手権(11月、豪州)に出場するが、そこで獲得した出場枠を使って世界選手権(来年3~4月、米国)に出るのは、来年の日本選手権優勝チームとなることも理事会で決まった。日本協会の柳等強化委員長(北海道・北見工大准教授)は「五輪を一つの区切りとして、他のチームにも世界で戦うチャンスを与えたい。それが日本のレベルアップにつながる」と説明している。
来年の日本選手権は北海道名寄市であり、男子は9チームが出場する。前年度優勝チームに与えられていた出場権は、準優勝だった札幌に与えられる。もともとの北海道枠3チームに開催地枠も加わり、北海道が5チームを占めることになる。(渡辺芳枝)