国道386号の山田交差点付近は、濁流があふれていた=5日午後6時13分、福岡県朝倉市山田、日吉健吾撮影
梅雨前線に湿った空気が流れ込んだ影響で、九州北部や中国地方は5日、記録的な大雨となった。気象庁は福岡、大分、島根各県に大雨特別警報を出した。福岡県警などによると、朝倉市や大分県日田市などで11人の安否がわかっていない。孤立した住民からの通報も相次ぎ、福岡、大分両県は自衛隊に災害派遣を要請した。
積乱雲が次々発生 「線状降水帯」、記録的豪雨の原因に
気象庁によると、朝倉市で5日午後3時38分までの1時間に観測史上最高となる129・5ミリの雨を記録。日田市では午後6時44分までの1時間に87・5ミリを記録した。3時間雨量でも5日午後、朝倉市で261ミリ、日田市で186ミリと観測史上最高の値を記録した。東シナ海から湿った空気が流れ込み、積乱雲が次々と発生する「線状降水帯」ができたためという。
数十年に一度の降雨量になる大雨が予想されるときに出される特別警報は、大分県内の15市町に午後7時55分、福岡県内の16市町村に午後5時51分に出された。福岡県内の3市町は午後11時48分に解除された。
福岡、大分両県では6日午後9時までの24時間に最大200ミリの雨が予想される。気象庁は引き続き、土砂災害や河川の増水に厳重に警戒するよう呼びかけている。
国土交通省九州地方整備局などによると、5日夜までに福岡県の添田町や朝倉市、大分県の日田市と中津市の少なくとも6カ所で河川が氾濫(はんらん)した。日田市ではJR久大線の鉄橋が流された。
福岡県警によると、朝倉市福光で「子ども1人が流されている」と110番通報があったほか、朝倉市杷木では夫婦が「崖崩れが起きた」と娘に電話で告げた後、連絡が取れなくなった。朝倉市須川でも男性1人が流されたとの通報があった。東峰村宝珠山では「家が流されている」と110番通報があり、この家に住む夫婦の安否がわかっていない。
福岡県の説明では、朝倉市で道路のパトロールをしていた56~62歳の県職員3人と連絡が取れなくなった。他に、朝倉市と日田市でそれぞれ男性と連絡が取れなくなっている。
福岡県久留米市では落雷で農業の50代男性と40代の妻が軽いけがをした。
福岡県の午後9時現在のまとめでは、家屋の全壊が3棟、半壊3棟、一部損壊2棟、床上浸水が7棟、床下浸水が8棟出ている。道路は2カ所が損壊。5カ所が土砂崩れで通行止めになり、6カ所が冠水した。
また午後10時現在、朝倉市では300世帯と、これとは別に市立松末(ますえ)小にいる児童ら18人を含む109人が孤立。隣の東峰村でも二つの特別養護老人ホームの入所者ら計100人以上が孤立状態との情報もある。
午後9時現在で福岡県内で計約17万世帯40万人、大分県内で計約1万2千世帯3万人を対象に避難指示が出された。九州電力によると6日午前0時現在、両県の計5700戸が停電している。
広島市では男性1人が亡くなった。
菅義偉官房長官は5日夜、記者団に「日の出とともに自衛隊、警察、消防6千人態勢、ヘリコプター六十数機態勢で捜索、救助にあたらせる」と語った。