国内発表されたレンジローバー・ヴェラール
英ジャガー・ランドローバー日本法人は11日、レンジローバーの新型SUV(スポーツ用多目的車)「ヴェラール」を国内発表した。老舗SUVブランドのラインナップ拡充で、活況が続く国内SUV市場でのシェア拡大を狙う。
レンジローバーは、英ランドローバーが1970年に投入した高級SUVブランド。初代は、堅牢なフレームに武骨なボディーをかぶせて高い悪路走破性を維持しながらも、高級セダンに匹敵する上質なインテリアや乗り心地を誇り、セレブ御用達SUVの元祖として芸能人にも人気だった。現在は、世界的なメーカー合従連衡の末、兄弟ブランドのランドローバーやジャガーと共に、インドのタタ・モーターズ傘下に収まる。
ヴェラールは、レンジローバー最小モデル「イヴォーク」と「スポーツ」との間に位置する中型SUV。最上級「レンジローバー」を含めて同ブランド4車種目となる。低い車高のスポーティーなデザインでユーザー層を広げたイヴォークのキャラクターを継承しつつ、上級のスポーツ譲りの居住性や快適性との両立をうたう。プラットフォームは、昨年に国内投入されたジャガーのSUV「Fペース」と共用。アルミ部材の活用による軽量化などで運動性能を向上させている。
外装は面の凹凸を極力減らし、細長いLEDライトなどでスタイリッシュに仕上げた。エンジンはターボ過給の直列4気筒ガソリンとディーゼル、スーパーチャージャー付きV型6気筒ガソリンを用意。価格は消費税込み699万円からで、今年限定の豪華仕様「ファーストエディション」は同1526万円。
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レンジローバー4車種にランドローバー2車種、ジャガーFペースも含めると計7車種にまで膨らんだ、ジャガー・ランドローバーグループのSUV。今年5月に国内受注が始まった新型ランドローバー・ディスカバリーにこのほど試乗し、魅力を探った。
レンジローバーの廉価版のような位置づけで1989年にデビューしたディスカバリー。全面改良を重ねるごとにより大きく、より高価になっている。5代目は全長4.9m、全幅2mの堂々としたサイズ。7人乗り3列シートを収めるべく、リアハングはふくよかだ。クーペ仕立てのヴェラールやイヴォークとは違って、昔ながらの本格派SUVの硬派なイメージが色濃い。
しかし、乗り味は現代風に洗練されている。試乗車の3リッターV6ディーゼルエンジンは驚くほど静か。車外だと大きめのアイドリング音が耳につくが、遮音が良くできた車内では気にならないレベルだ。オンロード性能にこだわったというハンドリングは軽快そのもので、以前に試乗したFペースよりもだいぶしなやかでソフトな印象。設計の新しさと車格の向上の分だけ、操安性も確実に向上しているように思えた。
世界的なブームを追い風に増殖し続けるジャガー・ランドローバーのSUV軍団。その勢いはBMWミニを思わせる。グループ全体の世界販売台数は2016年度に60万台を超え、過去最高となった。アジア市場の拡大も見据え、プレミアムブランドとして車種拡充が続くと見られる。
ただ、ディスカバリーはすでに上級ブランドのレンジローバーと肩を並べる高級車となり、各モデル間の差別化にはグループとしても苦労しそうだ。選択肢が増えるユーザー側も悩ましいが、新型車への最新技術投入を怠らないメーカーなので、迷ったらとりあえず一番新しいモデルにする、というシンプルな判断基準で選ぶのも良いかもしれない。(北林慎也)