阪神大震災で焼けた菅原市場を視察した皇后さまが現場に手向けたスイセンの花束=1995年1月31日、神戸市長田区、朝日新聞社撮影
■てんでんこ 皇室と震災・第2部11
阪神・淡路大震災では次々と火災が起きた。水道管が寸断され、道路もがれきや渋滞で通れなくなって消火活動ができず、300件近い火災で約7500棟以上が焼けた。特に、住宅が密集し揺れも激しかった神戸市長田区は、震災全体の焼失棟数の7割近い約4800棟が焼ける甚大な被害を受けた。
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発生から2週間後の1月31日、天皇、皇后両陛下は兵庫県内の被災各地を訪問した際、長田区では避難所ではなく、商店街とともに全焼した菅原市場(すがはらいちば)の焼け跡へ赴いた。
経営していた鶏肉店が全焼した小畑泰枝(こばたやすえ)さん(73)は、たまたま銀行に用があって近くを通ったところ、警察官を多く見かけたので「何かあるんですか」と尋ね、「天皇陛下がおみえになるんですよ」と聞いた。
両陛下は焼け跡に向かって深く黙礼。皇后さまは、女官が持参した白い箱からスイセン17本の花束を取り出し、がれきの上に手向けた。県知事公室次長兼秘書課長だった斎藤富雄(さいとうとみお)さん(72)は「花束を供える話は事前になかった。東京からお持ちになっていたことにも気づきませんでした」と振り返る。
小畑さんは99年、天皇陛下即…
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