3回戦で敗退した生野工の福主将=久宝寺
(21日、高校野球大阪大会 泉尾工12―3生野工)
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9点差をつけられた七回。生野工の先頭打者、福昴(すばる)(3年)は、狙っていた直球をたたいたが内野ゴロ。1死。続く2人もゴロに倒れるのをベンチから見て、静かに天を仰いだ。
大阪大会3回戦。生野工は3―12で敗れ、福の最後の夏は終わった。福は6人きょうだいの末っ子。小学1年から、兄4人の背中を追うように野球をしてきた。兄は4人とも生野工の野球部で主将。当然のように同じ高校を選んだ。
昨夏、周囲に推され、福自身も主将に。「兄を超えて甲子園に行く」のが目標になった。
幼い頃から体が弱かった。生野工に進みたいと聞いたとき、厳しい練習に耐えられるか、母みどりさん(53)は不安だった。
だが、2年間でみるみる体が大きくなった。
今大会、初戦の伯太戦で本塁打を放つなど打撃でチームを引っ張った。この日も、一、三回に安打を放ち、いずれも仲間のバットで本塁を踏んだ。
スタンドから見守った次男隼人さん(33)は「よく打つな」。三男寛樹さん(31)も「兄弟にとって甲子園への最後の挑戦を、全力プレーでやりきってくれた」と、末弟の成長ぶりを喜んだ。
試合後、涙を流す福に兄たちが1人ずつ声をかけて握手した。福兄弟の足かけ20年近い夢はかなわなかった。福は「精いっぱいやった。悔いはない」。
次は兄たちがつくった地元の軟式野球チームに入るつもりだ。「お兄ちゃんたちと一緒にプレーできるのが楽しみ」。一気に末っ子の顔に戻った。=久宝寺(渡辺元史)