上田良一NHK会長=東京都渋谷区、池永牧子撮影
NHKの上田良一会長(68)が就任して半年。最重要課題として掲げる、テレビ番組のインターネット同時配信の実現に向けてひた走るが、民放からは「待った」もかかる。前会長時代にも指摘された「政治との距離」について問題視する意見が今なお多数寄せられるなど、公共放送のあり方を問う声はやまない。
公共放送から公共メディアへ NHK会長インタビュー
「視聴者に応分の負担金いただく」 NHK会長一問一答
「公共メディアが提供するサービスはどうあるべきか。きちんと議論し、急ぎ定めていく必要がある」。上田会長が1月の就任会見で真っ先に掲げたのが「放送と通信の融合」だ。
スマートフォンの普及などで若者を中心にテレビ離れが進む。2015年のNHKの調査で20代の16%がテレビを「ほとんど、全く見ない」と回答している。
籾井勝人前会長時代にも総務省と同時配信について検討を重ねてきた。15年に実証実験を始め、視聴者がどれほどいるかも調べた。昨年12月、東京五輪・パラリンピックを見据え19年に本格的な同時配信を実現させたい意向を表明した。
一方で、予想される巨額の設備投資や、番組の権利処理費用の不透明さがハードルとなり、民放側は「しっかりした議論が必要」と慎重姿勢を崩さなかった。キー局の番組をネットで見られるようになれば、地方局から視聴者を奪いかねない、との懸念もあった。
籾井氏時代は民放との関係作りが不足し議論が停滞した、との見方が大勢だ。NHK幹部は「前会長の失言続きで国会対応に追われ重要な同時配信の実務が進まなかった」と漏らす。
こうした遅れを取り戻そうと、上田会長は就任以来矢継ぎ早に手を打った。2月には、同時配信が実現した場合の視聴者による費用負担のあり方などを議論する有識者会議「NHK受信料制度等検討委員会」を立ち上げたほか、民放とのパイプ役に坂本忠宣専務理事をあてて各局幹部と会食の機会を作るなど、「融和路線」を意識してきた。
ただ、民放には不満がくすぶる。第一にあるのはさらなる肥大化への懸念だ。
NHKは受信料収入で3年連続…