改造内閣の特徴は……
安倍晋三首相が政権浮揚をかけた内閣改造・自民党役員人事。自ら「結果本位の仕事人内閣」と称した閣僚名簿だが、悩み苦しんだ末の跡がにじむ。問題を抱えるポストにはことごとく経験者を起用。来年の総裁選への思惑も絡み、局面打開とはほど遠いものとなった。
「閣僚として入ってもらいたい。ポストは後で伝える」
2日夕、自民党の河野太郎衆院議員に安倍晋三首相から電話が入った。報道各社が内定した閣僚の顔ぶれを次々と伝え始めていた時間帯だった。結局、「外相」の連絡を受けたのは深夜だった。
当初想定していた岸田文雄氏の留任構想が狂い、外相選びは最後まで難航し、首相側近の加藤勝信氏の起用説も飛び交った。閣僚経験のあるベテランは「外相なんて一番最初に決まっていないといけない。珍しい改造の流れだな」と首をひねった。
加計学園問題をめぐって国会で追及を受け続けた末、東京都議選で惨敗。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)をめぐる日報問題では稲田朋美氏が防衛相を辞任。政権にとっては下落が続く支持率を下げ止め、「落ち着かせる」(首相周辺)のが当座の目標。首相にとって失敗できない人事だった。ところが、水面下の調整は首相の思惑通りには進まず、「遠心力」を印象づけるものだった。
加計学園の獣医学部新設を認可するかを審査する文部科学相は、人事の焦点の一つ。そこで首相は7月31日、大臣経験者の伊吹文明・元衆院議長とひそかに会談し、就任を打診。だが、固辞された。
理論派でならしてきた79歳の伊吹氏。「三権の長」経験者として首相の「下僚」である一閣僚に座ることなど我慢がならなかったようだ。2日のBS番組に出演した伊吹氏は、打診について最後まで明かさなかったが、「非常に危機的だから、安倍さんにはどんなことでもしてあげたい。だが、もし頼まれても、『ちょっとできないな』と答えるだろう」と語った。
結局、2年前に「政治とカネ」の問題で農林水産相を辞任した西川公也氏に代わり、「緊急登板」させたことのある林芳正氏を今回も起用した。
林氏が所属する岸田派の若手は「困ったときの林大臣。大本命に断られて時間がない中で、ふさわしい人がいなかったのだろう」と解説。林氏本人も周囲に「なんで俺なんだろう」と漏らしたという。党幹部の一人はこの経緯について、「断るような人のところに要請してはいけない。内閣の威厳にかかわる」と苦言を呈する。
稲田氏の辞任や日報問題で、防…