iPS細胞を使って血小板をつくる仕組み
iPS細胞から作った輸血用の血小板製剤の開発を目指している大学発ベンチャー「メガカリオン」(京都市)は7日、2018年にも臨床試験(治験)を日本と米国で始めることを明らかにした。20年をめどに医療現場で利用できるようにすることを目指すという。
血小板は血をかためる働きがあり、重篤な出血や貧血の患者に輸血される。国内では年間80万人が受けている。保存が難しいため採血から4日間しか使えず、少子高齢化によって今後、献血では供給が間に合わなくなると懸念されている。
メガカリオンは、中内啓光・東京大特任教授や江藤浩之・京都大iPS細胞研究所教授らが開発した技術を用い、iPS細胞から血小板を生み出す細胞を作り、人工的に血小板を量産する技術開発を進めてきた。
今回、大塚製薬工場など15社と連携し、大量に作った血小板の品質確保や分離、保存する技術を確立した。これまでは週に2人分しか製造できなかったが、数千人分を量産できるようにするという。
メガカリオンによると、今回の治験は日米で18~19年にそれぞれ開始することを目指す。血液中の血小板が減る「血小板減少症」の患者を対象に、iPS細胞から作る製剤の安全性を確認し、体内の血小板の数がどう変化するかをみる。iPS細胞から作った血小板は無菌状態で作れるため、2週間ほど使えるという。
再生医療製品に該当するため、国内では条件、期限付きで早期承認する仕組みを使える。承認されれば、血小板減少症のほか、外科手術や交通事故の患者の止血などにも利用できるようにしていく予定という。
iPS細胞を使った臨床応用をめぐっては、理化学研究所などのグループが目の難病の加齢黄斑変性の患者に初めて実施。大阪大ではiPS細胞から作った心筋シートを重症心不全患者に移植する計画を進めている。また、血小板では、京都大iPS細胞研究所のグループも血小板が減る重い貧血患者を対象にiPS細胞由来の血小板を輸血する臨床応用の準備を進めている。