青森山田の三浦慶真君=柴田悠貴撮影
(18日、高校野球 東海大菅生9-1青森山田)
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青森山田の三浦慶真(けいま)にとって、この夏の初登板が甲子園のマウンドだった。父は三塁側ベンチから見つめている。「親子鷹(おやこだか)」。と言っても、監督ではない。父は責任教師の三浦知克部長だ。
父も青森山田の野球部OB。だから、自分も小さいころからファンだった。進学先を決めたとき、「つらい思いをするよ」と反対されたが、押し切った。
その言葉の通りだった。自宅は学校の近くにあるが、寮に入った。親子の会話は減り、「部の業務連絡だけになった」。部長からきつい練習を課されると、仲間は嫌がった。「悲しくなって、心が痛んだ」
父の悪口が聞こえてくることもあった。もやもやとした気持ちを抱えながらの練習。父には相談できなかった。自分も2年夏までメンバーに入れなかった。
昨秋の県大会直前に「帰宅日」があった。実家に帰ると、父に銭湯に誘われた。お湯につかると、親子に戻れた。久々に2人だけで過ごす時間。父は独り言のように言った。「色々周りから言われると思うけど、『だから何?』って思っておけ」
その言葉が支えとなった。夏の青森大会の登板はなかったが、背番号「11」で甲子園のメンバーに入った。開会式、バックネット裏で行進を見ていた父が涙を流したと聞いた。ポーカーフェースで、怒ると怖い父が自分の前で泣いたのは、初めてだ。「気持ちは二人三脚でやってきたんだな」と気づかされた。
甲子園のマウンドは、高校入学時に父から勧められた横手投げで楽しめた。二回途中2失点で降板。「打たれた後、切り替えて(次の打者へ)と思ったら、もうすぐ横に(2番手の)三上が来ていた」。結果は残せなかったが、できることはやった。1―9で東海大菅生に敗れた。
「お父さんと2人でやってきて、ありがとうという気持ちしかない」。野球はこれで一区切り。将来は父のように高校教諭になろうと思っている。「これからもつらいことは山ほどあると思う。でも『だから何?』って思えば、乗り越えられます」
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三浦部長は試合後、投手三浦をねぎらった。「よく自分で最後まで戦ってくれた。これで引退。家に帰ってくるから、親子に戻ろうと思います」(小俣勇貴)