塙宣之さん=北村玲奈撮影
■甲子園観戦記 漫才師・塙宣之さん
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おもしれー。九回表、神村学園が3点差を追いついた。2死からですよ。アルプスがみんなで盛り上がってる。僕もあのとき、甲子園に来てれば良かったなあ。
佐賀・龍谷高2年の時、野球部が夏の甲子園に出たんです。ほとんどの生徒が応援に行ったけど、帰宅部の僕は行かなかった。当時はひねくれてて、なんで同級生の応援なんかしなきゃいけないんだって思ったんでしょうね。
志村けんさんやダウンタウンの松本人志さんに憧れて、僕は小学校の時からお笑い芸人になりたかった。高2の時、テレビ番組のお笑いコンテストで優勝したんです。でも、甲子園を決めた野球部は騒がれてるのに、僕はクラスで全然話題にならない。野球やってなきゃいけないのかよって思いました。まあ、試合は普通に家のテレビで見ましたけどね。見るのは大好きなんです。自分ができないことをやってる人たちだから。
高校野球って、やっぱり団結力が大事だと思います。漫才も2人の呼吸が合ってる時じゃないとコンテストを勝ち抜けない。ケンカしている時なんかは、間のズレがある。
若手漫才の日本一を競うM―1グランプリで2008年に3位になったとき、実は2人とも調子が悪かった。いつもは受けるネタをやってもリズムが悪いというか、「切れのない145キロの球」みたいだった。僕は、あまりコンテストの優勝は目指さないんですよ。僕の中では「受けたい」だけ。それができなかったのが、M―1です。
色紙に書いた「ヤホー」はインターネットのヤフーをもじった僕たちの定番のネタです。みんなが知ってるものを紹介するんだけど、間違えまくる。「きのうインターネットのヤホーで調べたんですけど、イチローって知ってますか?」と始めて、(歌手の)鳥羽一郎さんを紹介したり。 漫才で高校野球のネタは受けるんですよ。みんなが知っているから。「マー君(田中将大)、実は高校時代から目をつけてたんだよね」とか。
十二回表、神村学園が3点を勝ち越したと思ったら、その裏、明豊がひっくり返した。すごい試合。甲子園ってやっぱいいっすねえ。ずっと同じことが行われてきた、伝統の舞台。色んなものが染みついた場所だと思います。
いま思えば、高2の夏に来なかったのは、野球部がうらやましかったんだと思います。まぶしすぎて、見たくなかったというか。でもその時、自分は注目されないという悔しさがあったからこそ、漫才でここまで来られたのかなと思います。(構成・鈴木健輔)
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はなわ・のぶゆき 1978年、千葉県出身。小学5年から8年間は佐賀在住。00年、大学の後輩の土屋伸之さんと「ナイツ」を結成。プロ野球と大相撲の熱心なファンとしても知られる。漫才協会副会長。