力投する二松学舎大付の市川=柴田悠貴撮影
(18日、高校野球 三本松5―2二松学舎大付)
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「監督さんを胴上げできなくて申し訳ないと思っています。悔しいです」。二松学舎大付のエース市川が続ける。「自分がもっと粘れていれば、打線が打てたと思う。自分の駄目なところが出てしまって。悔しいです」。試合後のインタビュー通路。お立ち台で、市川の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
市原監督とは小学生のころに出会っている。父が市原監督と知り合いで、二松学舎大付の試合をよく見に行った。はがきのやりとりもした。「『僕は野球の練習をがんばっています』なんて来たので、『野球だけじゃなく勉強も頑張らないとうまくならないぞ』と返したのを覚えています」と市原監督は懐かしむ。
それから、市川は二松学舎大付の野球部に入った。打力が高く、1年からベンチ入りし、昨夏は4番も務めた。しかし、投手としてはなかなか結果を出せなかった。市原監督は「ガツガツしたところがなくて。勝負の世界では優しすぎるようにも思った」。
それでも、市川は厳しい練習に耐えた。「粘りが足りない」と叱咤(しった)し続けた市原監督や仲間の言葉を励みにこの夏、成長した姿を見せた。ピンチにも崩れない。東東京大会では5試合計35回を投げて5失点。今大会の初戦も8回を投げて1失点で勝利に貢献した。
この日も粘る姿を見せた。毎回走者を出しながら四回まで無失点。五回にスクイズ、六回に適時打を浴びたが1失点ずつで踏ん張る。だが、九回は連打と四球、さらに適時打を許して降板した。
「まさか2人でここに立っているなんで想像もしませんでした」と、試合後の市原監督は言った。隣で涙を流して自分を責める市川の姿は見えていた。「選手にああいうことを言わせるのは本当に申し訳ないですね」と苦しそうに言った。自分の反省も口にした。「これが僕の駄目なところなんですけど、代えないで信じることも大切だなと。市川と心中だなあと思った」
毎夏、監督には教え子たちとの別れがやってくる。野球を通じて知り合い、3年間をともに闘った息子のようなエースをねぎらった。(坂名信行)