全国制覇への挑戦権をかけて２２日、４強が激突する。準決勝の第１試合は打撃戦となり、広陵（広島）が天理（奈良）を１２―９で破った。広陵の中村奨成君（３年）は一回と五回に本塁打を放ち、１大会個人通算本塁打を「６」とし、清原和博さん（ＰＬ学園）が持っていた記録（５本）を抜いた。

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中村君の初回の打席。強くたたいた打球は大きく上がり、その行方を見守るかのように球場が一瞬息をのむ。バックスクリーンに飛び込む２点本塁打となり、球場が大きく沸いた。

五回は先頭打者で打席に。今度はバックスクリーン横にたたき込み、歓声がどよめきに変わった。

球場には朝から大勢の観客が詰めかけ、予定より３０分早い午前７時半に開門した。午前４時に並んだという京都府城陽市の大学２年鈴木寛也さん（２０）は、バックネット裏に座席を確保。中村君の記録に、「こんな大舞台で打つなんて、彼はやっぱりスター。予想を超えすぎて笑うしかない。ここまで来たらもう１本みたい」と喜んだ。

大阪市西区の自営業佐川勇さん（７０）は、４０年以上、春夏の甲子園に駆けつけ、ほぼ毎試合観戦している。中村君の記録に「もはやびっくりして言葉がない。プレッシャーを感じないのでしょうか。あの子は怪物です」。

東京都目黒区の小学５年、小西幸輝君は「こんなに広い球場で６本もホームランを打つなんて。僕も野球をしているので、甲子園で打てるような選手になりたい」と話した。

中村君は準々決勝までの４試合で、１８打数１２安打１０打点４本塁打。３回戦の聖光学院（福島）戦では同点の九回に２点本塁打を放つなど勝負強さが光り、試合ごとに注目度があがった。

兵庫県西宮市内で２１日にあった練習の会場では、子どもたちからサインを求められた。「自分でいいの？」と戸惑いつつも、きれいな字で名前と学校名を書いていた。

試合後、中村君は「良い場面で打てて良かったが、記録については優勝してから喜びたい」と話した。

対する天理の神野太樹君（３年）も今大会注目の強打者だ。ヤクルトの強打者に打撃フォームが似ていることなどから、「天理のバレンティン」と呼ばれる。１７２センチ、７７キロと背は大きくはないが、がっちりとした体格だ。

勝負強さを買われて奈良大会から４番が定位置。甲子園でも初戦の大垣日大（岐阜）戦で本塁打２本、準々決勝の明豊（大分）戦では適時二塁打１本を放った。この日も三回の第２打席で２点三塁打を放つなど３安打。

兵庫県加東市の大学４年木村礼美さん（２１）は２人の対決を楽しみに午前６時半に球場にやってきた。「中村君の記録に立ち会えて光栄。神野君も勝負強い」