唐草模様の風呂敷を首に巻きちょこちょこと走る姿で人気の柴犬(しばいぬ)「豆助」。「和風総本家」(テレビ東京系、毎週木曜夜9時)のマスコットだ。20代目がこの秋デビューする。愛され続ける理由は何なのか。(湊彬子)
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今月中旬、初登場を控えた撮影現場。記者がお邪魔すると、豆助が民家の縁側でウトウトし始めた。「かわいい~」。スタッフは和んだ顔を見合わせ、カメラをそっと寝顔に向けた。
お目覚めの後、人形や果物を置いた構図の撮影が始まった。スタッフは、カメラを見てもらおうと、「まめ~」と呼んだり、猫じゃらしやイルカの人形を振ったり、懸命にあやす。
うまく撮影する鍵は、豆助の気を引くものを見つけること。だが20代目は人形や音に関心を示さず、のんびりしている。撮影期間中豆助とともに過ごすドッグトレーナーの遠藤和博さん(42)は「こうやれば、という技はあるようでない。真剣に向き合うことが大事です」。
番組はテレビ大阪制作で2008年春に始まった。「和」をテーマに、職人技などをクイズを交えて紹介する。豆助は同年夏、和菓子店にお使いに行く役割で初登場。トレードマークの風呂敷は、菓子を包む小道具だった。初代は成犬で、2代目からは子犬に。人気を決定づけたのが11年春就任の7代目。フワフワの丸顔が視聴者の心をつかみ、写真集も出るようになった。「こんな人気者になるとは思わなかった」と、初代から担当する浅川政樹ディレクター(42)。街中で撮影すると、「豆助ですよね」と声をかけられることもあるという。
初登場から10年足らずでもう20代目。子犬は成長が早く、撮影期間は半月程度。約半年で次にバトンタッチするためだ。
つきあう期間は短くても選ぶ過程は入念だ。20代目は、各地のブリーダーから寄せられた何十匹もの写真から候補を絞り込み、さらに動画を撮った上でスタッフで話し合って決めた。
重視するのは、風呂敷が似合うかどうか。過去には口周りが濃い色の“どろぼう顔”や、黒色の豆助もいたが、20代目には“これぞ柴犬”の茶色の子犬を選んだ。長く豆助を撮ってきた写真家の森下泰樹(たいき)さん(42)は「歴代豆助はすべてかわいくて日本犬らしさがある」と話す。
物作りの現場をじっくりと見せる番組にあってその存在は、「視聴者にほっこりと肩の力を抜いてもらう効果もある」と庄田真人プロデューサー(42)。「『豆助の番組』と言われることはうれしい」
20代目は、10月5日夜7時58分からの10周年記念スペシャルで初登場する。