帰国15年を迎えて近況を語る拉致被害者の地村保志さん、富貴恵さん夫妻=9日午前11時59分、福井県小浜市、角野貴之撮影
北朝鮮に拉致された地村保志さん(62)、富貴恵さん(62)夫妻ら被害者5人が帰国してから15日で15年を迎えるのを前に、地村さん夫妻の地元、福井県小浜市で9日、拉致問題の解決を訴える集会が開かれた。
保志さんはあいさつの中で、「日本での社会復帰など様々な問題に直面した。多くの方々の支援と協力で乗り越えられた」と感謝の思いを述べた。
夫妻より遅れて2004年に帰国した3人の子供の近況については、「地元企業で精力的に働いている」などと紹介。保志さん自身は昨年、小浜市役所を定年退職し、富貴恵さんは県の嘱託職員として現在も働いているという。
一方、核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮情勢には「不安を覚える」と言及。日本政府に対し、「圧力強化に固執することなく、政府間交渉を進めてほしい」と訴えた。
富貴恵さんは「夢にまで見た帰国から15年。まだ解決の糸口が見つからないままです。これからも、どうか協力をお願いします」と話した。
集会には新潟県佐渡市で拉致され、同じく15年前に帰国した曽我ひとみさん(58)も参加した。一緒に拉致され、再会を果たせないままの母親ミヨシさん(85)について「大好きな、優しいかあちゃん。どうか、どうか、一日も早く、一時間でも早く、かあちゃんを返して下さい」と訴えかけた。
拉致被害者家族会代表の飯塚繁雄さん(79)は妹の田口八重子さん(拉致当時22)の写真を掲げ、「これ以降の写真がないんです。『あんちゃん、早く助けてよ』と言ってるんです」と声を強めた。
集会では拉致の可能性が疑われる特定失踪者問題の解決も強調された。1984年に行方不明になった越前市の河合美智愛さん(失踪当時20)の母、喜代子さんは「せめて娘に会えるまで元気でいたい」と話した。(清水大輔)