カラオケ喫茶を開き、人々の身の上相談にも乗る旅田卓宗さん=和歌山市新内
1980年代半ばから2000年代初頭、政党を頼りにせずに和歌山市長を4期通算13年務めた旅田卓宗さん(72)。名物市長として音に聞こえた存在だった。収賄と背任の罪で有罪判決を受け、服役を終えた後、和歌山市内で15年にカラオケ喫茶を始めた。様々な悩みを抱える人たちの相談に乗る「駆け込み寺」にもなっている。
和歌山市の歓楽街・新内(あろち)。まだ人もまばらな午後1時、飲食店が軒を連ねるビルに、旅田さんが出勤してきた。営業時間前のスナック店舗を借りて、カラオケ喫茶の店長をしている。
男女関係について相談した会社員女性(61)は「世の中理不尽、矛盾だらけ。悩んでも仕方がないことは受け入れるしかない」と助言されたという。「ありきたりの言葉でも、市長からどん底まで経験した旅田さんに言われると、なぜか納得してしまう」
売り上げ目標は1日1万円。「ついこの間、月間ノルマをようやく達成したんよ」。柔和な笑顔を見せる。保守王国・和歌山で自民党を敵に回し、「仁義なき闘い」を繰り広げた異色の政治家の面影は、ない。
警察官、県議を経て86年に自民党現職を破り41歳で和歌山市長に初当選。当時県庁所在地の市長としては全国最年少。川の水質浄化やごみのポイ捨て規制などの条例を全国に先駆けて設けるなど世論の動向に敏感で熱烈な支持者がついた。
一方、数々のスキャンダルでも…