公益信託の新制度のイメージ
個人が所蔵する美術品や伝統的な建物の一般公開などを進めようと、法務省が公益信託制度の変更を検討している。信託財産の種類を広げ、公益事業の担い手を増やす方向で、法制審議会の答申を待ち、再来年に公益信託法改正案を国会に提出する方針。
公益信託は個人や団体が信託銀行などに財産を預け、公益事業を委託する制度。運用益などは非課税となり、相続税の対象から除外される。
現行法では税制優遇の対象となる信託財産は金銭のみで、事業の担い手は信託銀行に限られる。一般社団法人信託協会(東京)によると、2017年3月末現在、運営されている公益信託は472件、約605億円。代表的なのは、奨学金や、がんなどの研究助成金を支給する事業だ。一方、不動産などを公益事業で運用するには、公益財団法人を設立するなど手間がかかり、敬遠されていた。
制度変更案は、美術品や不動産などの財産も信託可能とし、一般企業やNPO法人も財産を預かり、事業を担えるようにする。法務省は公益信託法を改正するとともに、税制優遇について財務省と調整を図る。制度変更によって、個人が所蔵している貴重な美術品や歴史的価値のある建物の一般公開▽経済環境が厳しい留学生などを対象にした学生寮の運営――といった公益事業が進むと期待される。法制審は年内にも中間試案を取りまとめ、「パブリックコメント」を経て、法相に答申する。(小松隆次郎)