西室泰三氏
東芝社長、日本郵政社長、東京証券取引所会長などを歴任した西室泰三(にしむろ・たいぞう)さんが死去したことが18日、わかった。81歳だった。葬儀は近親者で営む予定。
山梨県出身。1961年東京芝浦電気(現東芝)に入社。米国に10年以上駐在するなど国際経験が豊かで、DVDの規格統一交渉で日米欧のメーカーのまとめ役をつとめた手腕を買われ、96年に社長就任。重電部門出身の社長が歴代続いた東芝で、半導体部門からの登用は異例といわれた。赤字体質に苦しむ巨大組織に社内分社制を採り入れ、人事や予算の権限を移すなど経営改革に力を注いだ。
2000~05年の東芝会長時は経団連副会長、日米経済協議会会長などをつとめ、幅広い分野で論客ぶりを発揮した。小泉政権下で01年にできた政府の地方分権改革推進会議では議長として、地方税財政の「三位一体改革」の提言をまとめた。地方への税源移譲などを巡り、片山善博・鳥取県知事(当時)らと対立する場面もあった。
05年6月には、旧大蔵省OBをトップに招くのが長い慣例だった東京証券取引所の会長になった。システム障害が相次いで当時の社長が引責辞任すると、同12月から社長を兼務。東証の信頼回復をめざした。
13年6月からは、民主党政権下で滞った郵政民営化を改めて推し進めたい安倍政権の意向を受け、日本郵政社長に就任。15年秋の日本郵政と金融子会社のゆうちょ銀行、かんぽ生命の同時上場への道筋をつけた。
一方、15年に発覚した東芝の不正会計問題では、社長選任などに強い影響力を持っていた西室氏の責任を指摘する声が上がった。日本郵政社長として主導した豪州の物流大手トールの買収も後に巨額の減損処理を招き、批判を浴びた。