ニュージーランド(NZ)で19日、9年ぶりに政権交代することが固まった。9月23日の総選挙で第2~4党だった労働党、ニュージーランドファースト党、緑の党が協力し、ジャシンダ・アーダーン労働党党首(37)が首相に就く。労働党は環太平洋経済連携協定(TPP)の一部見直しを求めており、交渉への影響は避けられない。
NZファースト党のピーターズ党首が19日、労働党を連立相手に選ぶと発表した。アーダーン氏は女性としては同国で3人目の首相となる。
総選挙(一院制、基本定数120、任期3年)では、2008年から政権を担ってきた国民党が56議席(改選前58議席)で第1党を維持した。だが、若いアーダーン党首が「変化」を訴えた労働党も46議席で改選前の31議席から議席を伸ばしたため、両党とも連立政権を目指す意向を表明。8議席の緑の党は労働党と近く、国民、労働の両党とも政権協力したことがあるNZファースト党(9議席)の動向が焦点だった。
労働党は、国内で深刻化する住宅価格の高騰を抑えるためとして、外国人の中古住宅への投資を禁止する公約を掲げた。TPPの「投資の自由化」の原則にかかわる内容のため、協定の一部見直しを求めて再交渉する姿勢を示す。
さらに、NZファースト党は「外国の大企業が政府を訴えてくる」として、TPPが定める投資家と国の紛争解決手続き(ISDS)の制度に反対している。
TPPは、今年初めの米国離脱後、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議の際に残る11カ国の間で改めて協定の大筋合意を目指している。日本やオーストラリアと並ぶTPPの先導役のNZの見直し要求は、交渉にブレーキをかけかねない。(シドニー=小暮哲夫)