ソウルで9月に開かれたサムスン電子の新型スマートフォン「ギャラクシーノート8」の発表会。スマホ事業のトップ、高東真無線事業部長が危機の「克服」を宣言した=武田肇撮影
韓国の財閥系電機最大手のサムスン電子が、半年以上もオーナー経営者不在のまま、空前の利益をたたき出した。半導体やスマートフォン事業が好調なためで、今期の営業利益は5兆円の大台に乗ることがほぼ確実だ。ただ、「船団長がいない状態」(同社幹部)の長期化で、成長分野への大規模投資や企業合併・買収(M&A)の決断もままならず、社内には危機感が募っている。
サムスン電子は13日、2017年7~9月期の決算(速報値)で、本業のもうけを示す営業利益が14兆5千億ウォン(約1兆4500億円)に達し、四半期決算としては過去最高益を更新したと発表した。通期の業績でも、営業利益が過去最高の50兆ウォン(約5兆円)を超えるとみられる。営業利益の5兆円超えは、米アップルなど世界でも数社とされる。
ところが同じ日、決算のほかにも電撃的な発表があった。半導体事業の責任者でもある権五鉉(クォンオヒョン)副会長兼最高経営責任者(CEO)が、任期満了となる来年3月で経営の第一線から退くと公表したのだ。権氏の声明文には危機感がつづられていた。「今は幸いにも最高の実績をあげているが、これは過去の決断と投資の結実に過ぎない。新たな成長の原動力を探すことを考えられないでいる」
背景にあるのは、経営に強く関与してきた創業家の不在期間が8カ月を超えたことだ。オーナー経営者で創業家3代目の李在鎔(イジェヨン)副会長は2月、朴槿恵(パククネ)前大統領への贈賄事件で逮捕された。8月には一審で懲役5年の実刑判決を受け、勾留が続く。父でカリスマと呼ばれた2代目の李健熙(イゴンヒ)会長は、病に倒れて久しい。
権氏の引退表明は、自らが去る…