映画祭の開幕イベントで会場の歓声に応える(左から)安藤サクラ、蒼井優、満島ひかり、宮﨑あおい=25日、東京都港区、池田良撮影
第30回東京国際映画祭が開幕した。東京都港区の六本木ヒルズをメイン会場に、国内外計231本の作品が上映されるアジアでも最大規模の映画祭だが、近年話題性はいま一つ。節目の年に来場者の裾野を広げようと、新たなイベントを次々打ち出して盛り上げを図っている。
満島ひかりさんら、華やかに登場 東京国際映画祭開幕
アートとエンタ、調和めざす 東京国際映画祭25日開幕
特集:東京国際映画祭
開幕日の25日午後。時折大粒の雨と強い風が吹き付ける中、上映作に出演する俳優や監督らがレッドカーペットを歩くと、サインを求めるファンの歓声やフラッシュが飛び交った。蒼井優、満島ひかり、宮﨑あおいの同世代俳優3人と登場した安藤サクラは、差し出されたマイクに「お祭り騒ぎでわいわいと楽しみたい」と話した。
今回、映画祭トップのフェスティバル・ディレクターに就いた久松猛朗(たけお)さん(63)は「誰もがふらっと参加して楽しめるお祭りにしたい」と話す。「これまで、会場の外から見ると、どこでやっているのかがわかりづらかった」
2008年まで映画祭の舞台だった渋谷では、メイン会場のBunkamuraオーチャードホールを中心に街全体が映画祭の雰囲気に包まれたが、六本木ヒルズは施設の構造上、映画祭のにぎわいが周辺に伝わりにくい。ハリウッド大作など集客力がある作品を集める「特別招待」部門では、会場が全面的に六本木に移ってから観客数が減少。渋谷時代の2万~3万人が、昨年は1万人を割り込んでいる。
映画祭では、上映会場の入り口に上映作のポスターを並べたスペースを設置。今回から、公式上映のあいさつなどで期間中に訪れた監督や俳優を呼び込んでポスターにサインをしてもらうなど、観客とゲストとの距離感を縮める試みを始めた。これまでは会場の裏口から出入りしていた。
敷地内のアリーナでは連日、無料の野外上映会を開催する。1985年の第1回にオープニング上映を飾った黒澤明監督の「乱」や、97年にワールドプレミア(世界初上映)として出品された「タイタニック」や「アルマゲドン」など、過去29回で注目を集めた作品を上映。フードトラックも出店し、お祭りムードを高める。
またハロウィーン間近の週末にあたる28日、仮装して六本木の街に繰り出す若者たちを取り込もうと、オールナイト上映「ミッドナイト・フィルム・フェス!」を開催。「君の名は。」の新海誠監督作やホラー映画などの特集を、6スクリーン同時に行う。
アジアの映画祭事情に詳しい映画評論家の暉峻(てるおか)創三さんは「釜山などの一部の映画祭では、学校の授業の一環で映画祭に参加できるような仕組みがある。普段あまり映画を見に行かない人、特に若者を呼び込むための協力を広く呼びかけてもいいのでは」と話す。(伊藤恵里奈、石飛徳樹)