日本で撮影した写真をジャケットにした「ベンチャーズ・イン・ジャパン」。手に持つのはコレクターの植村和紀さん
レコードジャケットを文化的財産として常設展示している東京都大田区の「ミュージックジャケットギャラリー(MJG)」が開設10年目を迎えた。12月半ばまで記念企画「ライブ・イン・ジャパン」展を開催している。1950年代~80年代に企画・発売されたLP135点を見ることができる。
今回の展示では、日本で独自に企画され、当初は日本だけで発売されたLPを選んだ。米国ドルが固定相場制だった70年代初頭までは海外アーティストの来日公演は珍しかった。展示では、ラジオ番組の公開録音やスタジオ録音など「日本で録音されたLP」も「ライブ・イン・ジャパン」盤として扱った。
展示品のなかで最も古いのは、1959年(昭和34年)に発売されたラウンジ・トリオ「スリー・サンズ」のスタジオ録音盤。「実況録音盤」と呼ばれていたライブ盤の人気に火を付けた「ベンチャーズ・イン・ジャパン」(65年発売)もある。雪降る中、東京・赤坂にある日枝神社の境内で撮影されたメンバーの写真がジャケットを飾る。
ペギー・マーチやブレンダ・リーら女性アーティストが和服を着て手に扇子を持ったり、日本流にお辞儀をしたりするなど、60年代は「和」の香りを漂わせたジャケットが目立つ。日本の歌謡曲を日本語と英語のちゃんぽんで歌った録音も収録されている。
「ライブ・イン・ジャパン」というタイトルを一気に世界基準にまで押し上げたのは、英国ロック・グループ、ディープ・パープルの、その名も「ライブ・イン・ジャパン」(72年発売)。ジャケットも秀逸だ。舞台裏の高い位置から撮影され、ステージに立つメンバーの背中ごしに詰めかけた観衆の熱気が伝わってくる。
78年には日本武道館の名を冠した2枚のライブ盤が発売された。ボブ・ディランと、当時まだ無名だったチープ・トリック。ともに翌年に世界発売されると大ヒットし、日本武道館は「Budokan」の名とともに世界中のアーティストにとってライブの聖地になった。
80年代になると、クインシー・ジョーンズ、ジェームス・ブラウン、ゲイリー・ムーア、アラベスク、PILらの登場で、LPのジャンルの幅が広がり、ジャケットも多様化した。しかし、その後、CDにその座を譲ることになる。
展示品は、すべてコレクターの植村和紀さん(64)が所有している。2008年11月に常設展示を始めて以来、初回を除いて3カ月周期でテーマや切り口を変え、展示を入れ替えてきた。植村さんは「オリコンチャート」で知られるオリジナル・コンフィデンス社の編集長などを経て現在はフリー。所有するレコードは約2万5千枚、CDは4万枚を超える。
今回は10周年企画を念頭に「アーカイブ的な企画を考えた」と、5年ほど前から精力的に収集した約300枚の「ライブ・イン・ジャパン」ものから選んだ。
展示会場は、大田区鵜の木2丁目にある印刷会社「金羊社」の4階フロア。金羊社はレコードやCDのジャケットを制作している。
「ライブ・イン・ジャパン」は入場無料だが、開館日は11月9日、16日、12月14日、21日に限られ、事前申し込みが必要。各日とも午後1時~3時。申し込みは2日前までで、先着20人限定だ。詳細は下記のURLで。