黒部ルートは見どころが多い
北アルプスにある水力発電所を通る「黒部ルート」の観光をめぐり、関西電力と富山県がにらみ合っている。関電が「作業用の通路」として見学者を絞っているが、県は「もっと増やしてほしい」と訴えている。企業が持つ施設を観光に生かそうとする取り組みが広がるが、課題も浮かぶ。
高さ186メートルの黒部ダムから勢いよく放たれた水が虹をつくる。「黒部ルート」の入り口は、その脇にあるトンネルだ。観光客でにぎわう立山黒部アルペンルートと、紅葉が美しい黒部峡谷を結んでいる。
黒部ルートは、珍しい発電所の設備や歴史を体感できる。斜度34度の急なインクライン(ケーブルカー)に、NHK紅白歌合戦で中島みゆきが歌った黒部川第四発電所(黒四〈くろよん〉発電所)。谷間の温泉地の欅平(けやきだいら)へ向かう「上部専用鉄道」のトンネルの一部は「高熱隧道(ずいどう)」と呼ばれ、約80年前に人手で掘ったときは160度以上もあったと言われる。これらは関電が発電所の運転のために使っており、だれもが入れるわけではない。
関電は、富山県など地元の求めに応じ、1996年から一般の見学者を無料で受け入れてきた。この「公募枠」は年間約2千人で、平日だけだが、応募が4倍以上と人気だ。関電は別に「社客枠」を最大3千人分持っており、株主や顧客らを土日や休日に招いている。県は社客枠も開放してほしいとの立場だ。
県と関電が6月、「『立山黒部』世界ブランド化推進会議」で主張をぶつけあった。関電幹部は社客枠を「営業戦略の重要な要(かなめ)。(開放は)耐えがたい」と述べた。トンネル内では落盤の可能性もあり、「安全確保が難しい」と訴えた。一方、石井隆一知事は「立山黒部はみんなの財産だ」とし、安全面は「大事な顧客を20年も無事故で通している」と指摘した。
県が強気なのは、黒四発電所は…