がん患者の苦痛や不安を和らげる緩和ケアについての医師の知識を2008年と15年で比べると、1割以上増していたことが厚生労働省研究班の調査でわかった。研究班は一定の成果が出たと分析したうえで、今後の課題は患者への効果の検証という。
研究班は、全国のがん治療に携わる医師(08年4万8487人、15年2720人)に、緩和ケアの理念や痛みのコントロールに関する問いに答えてもらい、正答率を比べた。100点満点に換算すると、平均点は68点から78点に14%上がった。医師が感じる緩和ケアの「困難感」を点数化すると6%減少していた。
15年の調査では、緩和ケア研修会の受講の有無でも比べた。知識については、受講した医師の平均点が86点に対し、未受講の医師は74点だった。
07年度に策定した国のがん対策の指針「がん対策推進基本計画」に基づき、厚労省は08年から緩和ケア研修会を開催するなど、緩和ケアの充実を図る。地域のがん医療の拠点となる病院では、医師の研修会受講率9割以上を目標とする。だが今年6月末時点の受講率は85%。また、がん患者の3~4割は身体的、精神的な苦痛が十分に軽減されていないという別の厚労省研究班の調査報告もある。
研究代表者の加藤雅志・国立がん研究センターがん対策情報センターがん医療支援部長は「患者や家族に適切なケアができているかを検証し、質の向上に努める必要がある」と話す。(黒田壮吉)