自画撮り被害にあった児童の数
自分の裸の画像をインターネットを通じて他人に送ってしまう「自画撮り被害」にあう子どもが、この5年間で倍増している。ネット上の何げない会話をきっかけに、見ず知らずの他人に言葉巧みにだまされるケースもあり、行政や警察が対策に乗り出している。
「三代目 J Soul Brothersのライブに行くお金が欲しい」
昨年11月、10代の少女のネット上のつぶやきに男が反応した。
「裸の写真を送ってくれたらお金をあげるよ」
お金をもらえるなら――。軽い気持ちから写真を送信すると、今度は交際を申し込まれた。拒否すると、男の態度が豹変(ひょうへん)した。「写真をばらまかれたくなかったら言うことを聞け」
警視庁は今年7月、40代の男を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで逮捕し、こんなやりとりがあったことを明らかにした。男は少女の写真をネット上に拡散させ、いまもすべては削除されずに残っているという。
警察庁のまとめによると、昨年1年間に摘発した児童ポルノ事件のうち、自画撮りでの被害者は約4割にあたる480人。2012年の207人から年々増加している。被害者の約8割がLINEやツイッターなどで知り合った相手に自分の写真を送っていた。
東京都が子どもからネット上のトラブル相談を受け付ける「こたエール」でも、相談全体に占める自画撮り被害相談の割合は12年の1・8%から昨年は7・6%に増加している。
多くは、相手からの執拗(しつよう)な催促に疲れたり困ったりして裸の写真を送っていた。同性になりすました相手からの被害や、男子生徒からの相談もあった。「画像を売るぞ」「会ってくれたら消す」などと言われて実際に相手と会って性的被害を受けたケースもあったという。
なぜ「自画撮り」画像を送ってしまうのか。
ネットが子どもに与える影響について詳しいお茶の水女子大の坂元章教授(社会心理学)は、スマートフォンやSNSの普及で、自分の写真を気軽に発信できるようになったことや、身元を明かさずにやりとりできるという「油断」が背景にあると指摘する。
また13~18歳ごろは自己を制御する力が未熟なため、何度も要求されたり相手に恋愛感情を抱いたりして強い情動や欲求などを感じると、将来のダメージを過小評価してリスクの高い行動をとる傾向があるとされているという。
坂元教授は「自画撮りの危険性の啓発や、保護者が見守ることのできるツールの活用に加え、要求する行為に対する規制も考えられる対策だろう」と話す。
■警察や自治体の…