コンプレクソ・ド・アレマン地区の住宅の壁に残る銃撃された跡=11月10日、リオデジャネイロ、田村剛撮影
2016年8月に南米で初めて開催された五輪から1年余り。開催都市のブラジル・リオデジャネイロで、治安の悪化が止まらない。貧困層が暮らすスラム街では、毎日のように銃撃戦が繰り返されており、今年7月までの1年間の死者は700人を超えた。世界中が注目した「平和の祭典」は、そこで暮らす人々に何を残したのか。(リオデジャネイロ=田村剛)
昨年の五輪開催を前に拡張された国際空港から西へ約10キロ。リオ北部ペドレイラ地区は、ブラジルで「ファベーラ」と呼ばれるスラム街の一つだ。粗末な家々が立ち並び、ゴミが散乱した川からは悪臭が漂う。
この川に面した生徒700人の中学校で今年3月、13歳の女子生徒がバスケットボールの練習中、銃撃戦の流れ弾で死亡する事件が起きた。亡くなったのは、エドゥアルダ・ダコンセイサンさん。校舎のすぐ横で警官と麻薬組織の銃撃戦が起き、警官が撃った銃弾2発が頭を直撃した。
リオに1千カ所以上あるとされる他のスラム街と同様に、この地区にもコカインや大麻の密売を手がける麻薬組織が入り込んでいる。麻薬組織は巨額の資金で購入した武器で武装しており、警官隊が取り締まりに来ると、周囲に住民がいても銃撃戦が始まる。
母親のホジレニ・フェヘイラさ…