廃線が決まる前のJR三江線の車内。午後の列車は閑散としていた=2015年12月
来年3月末で廃線となるJR三江(さんこう)線(島根県江津〈ごうつ〉市―広島県三次〈みよし〉市)に乗ろうと観光客が殺到している。乗客があふれる列車もあり、ゆったり走るローカル線はまるで都会の通勤列車のよう。JR西日本では、場合によっては乗車できないケースもあると告知している。
「三江線後」へ短い検討期間 ぬぐえぬ不安
特集:“テツ”の広場
三江線は中国地方最長の川、江(ごう)の川に沿うように走る。全長108・1キロ。1930年に開業し、75年に全線が通じたが、1日1キロ当たりの平均利用人員を示す輸送密度は、1992年度の308人から2014年度に50人まで減った。山間部を走り、災害による影響も受けやすく、JR西は昨年9月に廃線を表明。だが、その直後から乗客が急増。紅葉シーズンは観光バスなどで駅に乗り付け、短い区間を乗る団体客が増えた。
祝日だった先月23日、東京都の弁護士中川学さん(36)は友人と2人で、午前10時2分発の列車に乗るため午前8時すぎから三次駅で並んだ。乗客が殺到していることを知り、早めに並んだという。
2両編成の車内は発車30分前からほぼ満員状態。中川さんによると、車内の窓は熱気で曇り、再三拭かなければならず、水分を補給するよう車内アナウンスも流れたという。JR西米子支社によると、気分が悪くなった乗客1人が途中で降車したという。それでも、地上約20メートルにある別名「天空の駅」の宇都井(うづい)駅に着くと歓声が上がり、「予想を超える混みようで驚いたが、みんなでこの路線の最後を惜しむという一体感を感じられた」と中川さんは満足そうに話した。
三次、江津両駅発の列車は普通列車のみで1日わずか5本ずつ。全線を最も速い直通列車で約3時間半かけて走り、日帰りでは十分楽しめない路線として鉄道ファンには知られる。
列車は通常1両か2両。廃線間…