在りし日の「ピース」(2015年12月撮影、東山動植物園提供)
名古屋市千種区の東山動植物園は9日、雄のコアラ「ピース」(6歳)が同日未明に衰弱のため死んだ、と発表した。出勤した飼育員が午前8時ごろ、床に倒れて死んでいるピースを見つけた。
園によると、生まれつき股関節が悪かったピースは9月ごろから左足を痛がるようになり、11月下旬には食欲が減退。展示を中止して、隔離室で治療をしていたが、死ぬ前日の今月8日はユーカリの葉を1、2枚しか食べなかったという。
ピースは2011年、同園生まれ。14年に埼玉県こども動物自然公園で、16年に東山動植物園でそれぞれピースの子どもも生まれ、国内での繁殖にも貢献してきた。園は10~24日、コアラ舎内にピースのため献花台をもうける。
「あそこにいたよね」。9日に来園した人々は訃報(ふほう)を聞き、ピースが暮らした空の飼育スペースを眺めていた。愛知県春日井市の主婦加藤智子さん(33)は「ピースは、足を組んで、両手を広げて寝ている姿が可愛くて、通る度に必ず見ていた。悲しいです」と在りし日の姿をしのんだ。
飼育担当の係長江口雄作さん(37)は「関節が痛かったと思うから、『ご苦労さま』と言いたい。コアラが痛みや不安を感じないようにケアする方法について、考えるきっかけにもなった」と話した。(寺田実穂子)