森友学園への国有地売却の経緯
特別国会が9日に閉会した。学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却をめぐる論戦では、昨年3月15日の学園側と財務省室長との面会後、売買交渉が一気に進んだ様子が明らかになった。なぜ財務省は異例の契約に応じたのか。安倍晋三首相の妻、昭恵氏の存在の影響は。問題の核心は不透明なままだ。
特集:森友学園問題
財務省室長との面会後、売買交渉進む
学園は、当面は土地を借りて小学校を建てるつもりだった。すぐ買い取ると決めたのが、昨年3月だ。
この土地では前年、汚染土を取り除く工事をしたが、学園の籠池泰典前理事長は3月11日、「新たなごみ」が見つかったと財務省近畿財務局に報告。4日後、本省の田村嘉啓・国有財産審理室長(当時)が籠池前理事長と面会した。
田村室長は前年秋、政府の昭恵氏付職員がこの土地について問い合わせた時、対応した人物だ。前理事長は「昭恵夫人の方からも聞いてもらったことがあると思う」と言いながらごみへの対処を求め、室長は「重大な問題と認識」「明日、財務局の方から伺う」などと答えていた。
その後、交渉は加速する。特別国会では、学園側と国との生々しいやりとりが、音声データなどで次々に判明した。
財務省は、財務局の職員が3月中旬、ごみの対応について「反省している」と前理事長に陳謝したことを認めた。学園が土地を買い取ると申し出たのは3月24日。学園側によると「払えるのは1億6千万円まで」とも伝えたという。
財務局の職員が3月下旬~4月ごろ、学園との協議で「3メートルより下にあるごみは(補償を)きっちりやるストーリー」と発言していたことも同省は認めた。「国のストーリーは『瑕疵(かし)を見つけて(土地の)価値を下げたい』」という3月30日の学園側の会議のメモも国会に示された。
財務局の職員は5月中旬、国が汚染土の除去で1億3200万円を負担したのを念頭に、「1億3千(万円)を下回る金額というのはない」としつつ、「ゼロに近い金額まで努力する」と伝えた。不動産鑑定士が9億5600万円の鑑定価格を出したのは5月末。国は6月、1億3400万円で売った。公益目的で購入を希望する自治体や学校法人を優先する過去5年間の「公共随意契約」の土地取引1214件のうち、分割払いを認めたのはこの1件だった。
財務省の太田充理財局長は国会で、最終的な売却額は提示していない、と正当性を一貫して主張した。前理事長は逮捕前、朝日新聞の取材にこう振り返っている。「(室長との面会後)対応はスムーズにいった」
■昭恵氏の国会招致に…