エンジンから煙が出て、脱出スライドを出した日本航空機=2016年2月23日(運輸安全委員会提供)
航空機からスライドで脱出するときは荷物を持たないで――。国の運輸安全委員会は21日、航空機の利用者に対して緊急時の脱出ルールの徹底を求める異例の「要望」を盛り込んだ事故調査報告書を公表した。
新千歳空港で昨年2月、日本航空機(ボーイング737―800型、乗員乗客計165人)のエンジンから発煙し、緊急脱出して乗客3人がけがをした事故で、多くの客が荷物を持ったまま脱出スライドに向かい、脱出に支障をきたしていたとわかったためだ。
煙が出たのは、同機が出発に向け誘導路で待機していたとき。雪が降っており、右エンジンの空気の取り込み口が凍結した。その影響で内部の空気圧の異変が生じ、オイルが漏れ、熱で発火したという。
機長はスライドでの緊急脱出を決断。すると乗客の大半が客室乗務員の指示に従わず荷物を持ったままスライドへ向かった。乗務員は荷物を取り上げる対応に追われ、その荷物は操縦室のドアの前に積み上がり、機長が出られなくなった。
スライドは空気で膨らむため、荷物やハイヒールで破れると脱出に使えなくなる。報告書は「生命を守るため極めて重要であることを理解し行動することが望まれる」と呼びかけた。
乗客3人は脱出の際に負傷。うち1人はスライドで地上に降りた際、前方に飛び出して腰から落ちて骨折した。(伊藤嘉孝)